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11.泉里SIDE

父に連れられて離れの屋敷に移動した。 今回は投薬が出来ないから療養の為約1ヵ月学校を休んで此処で過ごすらしい。 食事はきちんと用意するし、勉強も体調が落ち着いたら周りから遅れない様に教えるから安心して療養して欲しいと言われた。 離れは祖父の祖母が外国育ちだった為に洋風に設計されている。 いつも住んでいる純和風と違い違和感があるが、これはこれで好きだった。 見えるのは日本庭園でなく噴水と手入れが行き届いたお花畑。 屋内には小さいがプールやジャグジーもある。 住むには充分過ぎる位贅沢だが、1つ心配があった。 「父さま。あの、療養ですがその期間中俺は1人なんですか?」 いつも側に居る氷雨が居ない。 氷雨と一緒なら寂しくない。 だが、今氷雨は交流会で側に居ないのだ。 使用人や担当医は用がある度来るだろうが、それ以外は1人なのだろうか。 約1ヵ月もそうだったら寂しくて堪らない。 「泉里。学校で親しくしているαの子は居るか?」 突然何なのだろうか。 それに何故α? 不思議に思ったが 「氷雨以外には特にいませんが、昨日鳳くんと仲良くなりました」 素直に答えた。 一緒に買い物したし香水貰ったし仲良くなったと言って良いよね? 「そうか。確か鳳くんは家族にΩが居るらしいな。彼なら発情期のΩの状況も知っているだろうし、安心して任せられそうだ」 Ω?発情期? 「あの、父さま。何の話をされているのか分からないのですが」 「詳しくは鳳くんを呼び出してから説明するが、泉里、今日から暫くの間此処で彼と2人で過ごして欲しい。色々初めての事が沢山起きて怖いかもしれないが、鳳くんに任せておけば全て大丈夫だ。きちんと症状を抑えてくれる筈だから」 全く言っている事の意味が分からないが、これじゃまるで俺がΩみたいだ。 俺はαなのに。 あと、全て任せるって症状を抑えるってどういう事だ? 父が電話をし、数分後鳳くんが離れの屋敷に到着した。 「突然呼び出してすまなかったね。私は天羽大河(あもう たいが)、泉里の父親だ。今回君を呼んだのは依頼だ。約1ヵ月此処で泉里と過ごして欲しい。勿論君が望むだけ報酬も食事も与えるし、学校も公欠にするし、勉強面もサポートするから安心して欲しい。本来は氷雨くんに頼むべきなんだが、今回氷雨くんは交流会で不在だ。なので代理として君を呼んだ」 「あの、すみませんがよく理解出来ないのでもう少し詳しく教えてくれませんか?」 うん。確かに俺もそれだけじゃ理解出来ない。 「すまない、説明不足だったね。泉里、今迄誤魔化してきたが、お前はΩだ。血液検査でΩと分かってからは症状を抑える為点滴や薬を投与してきた。血液の難病と告げたが、あれは嘘だ。今迄してきた検査は全て症状を隠し通し、αとして生かす為なんだよ」 病気は嘘? そしてαじゃなくてΩ? 何言ってんだ。 だって学校で俺はαだと告げられた。 学校が嘘をついたのか? でもあの時、αと告げられた時嘘だと直感した。 自分がαだと信じられなかったからだ。 「未だにΩは差別的な目で見られる。虐めや性犯罪に巻き込まれる可能性も否定出来ない。もしΩだというだけで見下されたり蔑まれたりしたら、もし不当な扱いを受けたらって、考えれば考える程マイナスの事しか浮かばなくて、俺は泉里を守る為に性別詐称をした。勿論国に申請して特別に戸籍上だけでもαにして貰っているよ。そして今回の件なんだが、何か心当たりはないかな?いつから体調が悪くなった?」 「薬を変えてからかな。それ迄はいつも通りだった。なんかスッゴク頭痛くなって吐き気して目眩もした。で、鳳くんに聞かれたんだ。薬変えた?って」 「やはり君を選んで良かった。君は私達よりΩの事に詳しいね。私の周囲にはΩが居ないんだ。見た事はあるが、話した事はない。今迄は抑制剤で発情期を乗り越えていたんだが、今回は薬の投与が出来ない。副作用が出てしまったからね。安全の為に最低でも約1ヵ月はどんな薬も飲めない。発情期に薬を飲まなかったらどうなるか君の方が詳しいよね?教えてくれるかい?」 「抑制剤には色々な種類があります。全く同じ薬でも製薬会社によって配合も微妙に変わりますので、自分に一番合った薬を探すのはかなり気が遠くなる作業です。母は結婚前R社の薬を服用していましたが、逆に妹には合わず、妹はK社のを服用しています。家族だからって同じ薬が効く訳ではありません。今の薬に落ち着く迄、何回も妹は泉里と同じ状態になりました。合わない薬を服用すると拒絶反応が出るんです。そうなるとそれは薬ではなく毒でしかないので薬局に返却します。ですが、薬局は返金迄はしてくれないんです。一応保険は利きますが、一々処方箋を書いて貰う為に受診する必要がある為医療費が嵩みます。そのせいで何回か発情期に薬がない時がありました」 そういえば俺は今迄ずっと同じ薬だったな。 変えた事で拒絶反応が出たって事は、今迄のは身体に合ってたんだ。 「その時妹さんはどうやって乗り越えてたんだ?」 あっ、ソレ凄く知りたい。 自覚ないけどソレまさに今の俺の状態らしいから。 「あの、言い難いんですが、その、妹には運良く運命の番が居て、その時はその子の家に預けていました」 ん、それって? 「えっと、つまり、その。発情を抑える為に恋人同士の行為をして乗り切ってました。って、あの、これ以上は身内のそういった話言うの恥ずかしいんで話せません。すみません」 確かに恥ずかしいよな。 俺も両親のキスシーンとか見たくないし、エッチの話とか聞きたくないもん。 「すまない。ありがとう。でも最後に1つだけ聞いて良いかな?運命の番ってどうやって分かったんだ?Ωって少ないだろ?そのせいかウチの家系は殆どがα同士で結婚しているんだ。我が社にも居ないし、運良く見掛けても皆相手が居る。出逢うだけでも難しいのに、運命の番に逢えるなんて凄い確率だ」 「妹とその相手は、出逢った時に運命を感じたらしいです。互いに甘い匂いを感じ取って惹かれ合ったって聞きました。あとスッゴク相性が良いらしいです。って、うわっ、今のは無しで、恥ずかしいから」 相性? 恥ずかしいって何だ? 「番になったら薬飲まなくても番以外には殆どフェロモン効かないし、症状も治まるんだよね?服用してるって事はまだ正式にはなっていないのか?」 「はい。2人共番になるのは大学卒業後って決めてるみたいです。卒業したら結婚してその時に番になるって考えてるらしくて」 おお。なんか微笑ましいぞ。 「そうか、良かったな。妹さんは恵まれている。でも今の流れでいうと発情期に薬なしで過ごすには発散させるしか道はないって事かい?」 「まぁ多分、番成立させるか服用するか熱を発散させるかのどれかしか選べませんね」 ……………マジか。 「泉里は恐らくキスの経験もないし、性の知識も殆どない。多分先程の話を聞いていても殆ど理解出来てないと思う」 はい。 キスは知ってるよ?口を合わせるヤツだろ? でもエッ…エッチってその、何するんだ? えっと抱き合ってキスとかするんだよな?で、その後はずっとキス? ん? って事は子供ってキスしたら産まれんのか? な訳ないよな。 外国では挨拶でキスやハグをする国もある。 キスで妊娠してたら今頃世界の人口は溢れ返っているだろう。 やっぱり俺無知だ。 「周期的に今日か明日には発情期が来ると思われる。泉里は完全に初めてだから絶対パニックになるよ。本来ならそういうのって皆興味があって自分で調べたり人に聞いたりして知ってるし自分で処理する子も多いんだけど、泉里は氷雨くんが教えなかったから全くの無知なんだ」 え、氷雨のせいなのか? 「氷雨くんスッゴイ過保護だからね、泉里にそういうの教えたくなかったみたいなんだよ」 過保護って。確かに氷雨は俺に甘い。 同じ年なんだけどなぁ? 多分小さい頃から側で見守ってくれてるから年は一緒でも兄みたいな感覚なのだろう。 「発情するとね、身体が熱くなるんだ。そして一度そうなると発散しないと治らない。鳳くんすまないが今回だけ泉里の相手になって欲しい。無知な泉里に知識を教授してくれ。完全に身体から薬が抜け切って精密検査後異常がなければ君の仕事は終わりだ。それ迄長いが私からの我儘に付き合って貰えないだろうか?安心してくれ。君はあくまで代理だ。全てにおいて泉里の初めての相手になるが、何も気に病まなくて良い。これは仕事なんだから」 要約すると、仕事として割り切って俺の発情期を一緒に闘って欲しいと父は鳳くんに頼んでいるんだな。 発情って何だか分からないし、身体熱くなったらどうなるかも知らないけど今頼れるのは鳳くんしか居ないって事だよな? 氷雨居ないし。 「えっと、よく分からないけど宜しく?鳳くん」 握手を求めると 「俺で良いのか?」 複雑そうな顔で鳳くんは呟いた。

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