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第3話

本当に何とかしないと、自分がつらいだけ。…なんだよな。 でもどうしていいか分からない。 諦められるなら、もうとっくに諦めてる。 トイレ、なんて口実で、本当はあの場に居たくなかっただけ。 仲のいい圭典と佐田さんを見たくないだけ。 慣れなきゃいけないのに…。 しかもトイレとか言っといてキャンディ持ってきちゃってるじゃん。 食べ物持ってトイレ行くのは何か…ちょっと躊躇う。ほんとにトイレ行きたいわけじゃなかったし、行かなくてもいいか。 ため息をついて、また教室へ戻ろうと体を反転させるとすぐそこにいた誰かとぶつかってしまった。 「うわっ」 「ぎゃんっ」 おい俺、びっくりしたし尻もちついたとしても、尻尾踏まれた犬みたいな声出すな! 恥ずかしいわ! 「ごめんっ、大丈夫!?」 「いや、こっちこそ…」 ぶつかった相手が手を貸してくれたので、ありがたく掴まって立ち上がる。 立ってみれば、俺がぶつかって弾かれたのも当然と思えるくらい相手は背が高かったし、それに見合うだけのしっかりした体型だった。 もやしと揶揄されることもある俺とは大違い。 目が合うと、その人は軽く吹き出した。 え、何? 俺そんな面白い顔してる? 「っごめん、さっきの…ぎゃんって言ったの思い出しちゃって…」 笑うな。こっちだって恥ずかしかったんだからな。 「それはどうも失礼しました。っていうか手、離してください」 「あ、ごめん」 手も俺より大きかった。当たり前だけど。 「あ、そのキャンディ」 「え?」 「や、それ流行ってるよね」 「あー…そうですね」 「何で敬語?」 「初対面なんで。…クラスも名前も知らないし」 俺がそう答えると、その人はきょとんとした。 「それもそっかぁ。俺、4組の佐川 由音(さがわ よりと)。自由の由に音でよりとね。あんま読んでもらえないけど。名前だけ見ると、ゆのとか呼ばれちゃう」 「…2組の、牧瀬 七織」 「まきせ ななおくん、ね。よろしくー」 「どうも…」 自己紹介されたいわけじゃなかったんだけど…まぁいいか。 「あれだよね、滝島とよく一緒にいる」 「あぁ、うん」 滝島は、圭典の名字だ。 佐川くんも派手な顔立ちをしている。圭典とは系統の違うイケメンと言うか…そんな感じ。 「圭典に何か用事?」 「ううん、そういうわけじゃなくて。滝島 目立つから」 「ふぅん?」 目立つって言うなら佐川くんも人のこと言えないと思うけどな。

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