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第4話
俺が首を傾げたところで、予鈴が鳴った。
「あ、やべ。じゃあまたね、牧瀬くん」
「え? あ、うん」
また、なんてあるのか?
でも同じ棟にいるわけだし、ふたつ隣のクラスだし、たまには顔合わせることもあるか。そんなことを思いつつ教室に戻る。
圭典が佐田さんと何か楽しそうに話をしているのが見えたから、ふたりから目を逸らした。
早く何とかしたいのにな…。
「おかえり、マッキー」
「家じゃないけどただいま」
持ってたままのキャンディをカバンにしまって、ノートと教科書を取り出す。あと辞書も。
「…マッキーさぁ、」
「え?」
何? と聞きかけたところで本鈴と共に先生が入ってきて、それ以上は聞けなかった。
授業が終わってから改めて聞こうと思っていたけど、樋口さんは友達とおしゃべりしたり購買行こーって教室を出て行ったりで、なかなか機会はなく。
そうこうしているうちに、昼休みになってしまった。
「ななおー、飯食おー」
友人に声をかけられて、財布を片手に立ち上がる。
「今日 何食べる?」
「え、決めてない。あおは?」
「がっつり肉の気分」
友人のあお――日高 あおいは、華奢な体つきながらめちゃくちゃよく食べる。その細い体のどこに入っていくんだと思うくらいよく食べる。
いっそ見てて気持ちいいくらいだもんな。
「肉かぁ。…コロッケにしようかな」
「メンチじゃないんかい」
「あ、肉で揚げ物って言ったらメンチか。でもコロッケ」
メンチよりコロッケが好きだ。
「圭典くん、今日どこで食べる?」
「中庭行く?」
聞きたくないけど聞こえてしまう会話に、今日は中庭か、なんて思う。
あおがちらっと圭典を見た。
「彼女できたらやっぱ彼女優先なのは分かるけど、なーんか淋しい感じはするよな」
「うん。そうだね」
佐田さんと付き合い始めたら朝も放課後も佐田さんとだし。昼休みも佐田さんとだし。
あおも俺も、今まで一緒に昼ごはん食べてたのに。
なんて、そんな恨み言みたいなの言ったってしょうがない。佐田さんだって悪くないんだから。
「この前さ、映画観に行ったじゃん?」
「あ、うん」
「あれ圭典も誘ったんだけどさ、佐田さんと行くから、って断られたんだよな」
「え、そうなの?」
「うーん。何かさ、徹底してるっていうかさ、何か…変な感じすんな、って思った」
「変」
「何でも彼女と、みたいな? 別に彼女いたって友達と出かけるのって普通じゃん」
「うん」
「いいんだけどさ、何かちょっと…」
ちょっと、の後は、あおは何も言わなかった。それはきっと、マイナスなことだから。
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