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第5話

あおと一緒に学食で昼ごはんを食べて、だらだら喋りながら教室へ戻る。 「あ、ちょっと買ってきていい?」 途中であおが指差したのは自販機。 「いいよ。俺も何か買お」 「甘いの飲みたい気分なんだよな」 「とか言っていつもミルクティー最後まで飲めないじゃん」 「言われてみれば。でも炭酸苦手だしなー」 「普通にジュースは?」 「甘すぎる」 あおは悩んでレモンティーのボタンを押した。 ミルクティーよりは確かに甘くないかも。 「七織なに買ったの?」 「アセロラ」 「それ好きだよね」 「うん」 この廊下から、中庭が見える。 見たくないのについ圭典を探してしまうのは、もはやもうクセかもしれない。 嫌だな、って思いながらも視線を走らせると、圭典は藤棚の下のベンチに、佐田さんと座っていた。 こうして離れて見ていると、改めて思い知らされる。 美男美女でほんとにお似合いで、そこに誰かが入り込むなんてすごく身の程知らずもいいところ。 ふたりの世界は、ふたりで完成している。 あの世界に俺は入れない。俺だけじゃなくて、きっと誰もが。 「七織? どーした?」 「あ、ごめん。圭典と佐田さん見つけちゃって。…絵になるふたり、みたいな?」 そう言いながら、そっと視線を外す。 胸がツキツキと痛みを訴えていた。…叶わないと分かってるのに、知ってるのに、なのに何で痛むんだろう。 「ふーん?」 ストローを咥えて、あおは軽く首を傾げる。 あおも華奢な美少年だから結構モテるんだよな。 でも多分だけど、あおは学校の外に付き合ってる人がいると思う。これはほんとに何となくなんだけど。 「あっ、牧瀬くんじゃ~ん。朝ぶりー」 顔だけじゃなくて声も何となく派手というか華やかな感じがするのは何なんだろう。 振り向くと、俺に向かって手を振っているのは佐川くんだった。その後ろに、多分友達が数人。 「4組の佐川じゃん。七織知り合い?」 「いや、うーんと…朝、ちょっと知り合った…みたいな…」 「何それ曖昧」 だよね。俺も言っててそう思った。 「何見てんのー?」 「や、ジュース買ってただけ」 佐川くんに、手に持ったままのアセロラジュースを掲げて見せる。 「牧瀬くん気が合うねぇ。俺もそれ好き~。あっ、ごめん。友達と一緒だったね」 「あぁ、別にいいよ」 答えたのはあお。 だけど佐川くんってそういう気遣いできる人なんだな、ってちょっと見方が変わる。

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