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第8話
バタバタと昇降口まで走って靴を履き替える。
どこ行くとか全然話してないけど…駅前かな。モールあるし、ゲーセンあるし。
「ってわけでどこ行く?」
やっぱりノープランだった。
「とりあえずモールで良くない?」
あおが言うと、それもそうだね、と歩き出す。
「ねぇ、七織って小さい頃どんなだったの?」
「えっ、あお?」
「そーだなぁ…おとなしいっつか優しい感じだったから、地味に女の子に好かれてたな」
「えっ、うそ、知らなかった」
俺のモテ期そこだったの? 早くない?
「七織くん優しいから好きー。とか言われてたじゃん」
「そうだっけ? うわ、全然覚えてない…」
「んで、七織は『るみちゃんとわたしどっちが好き?』とか聞かれて困ってんの」
「七織モテモテじゃーん」
「ふたりともからかってるよね!?」
あははと笑うあおとあっしくんは、気が合うのかもしれない。
と、思っていたら、つん、と半袖の裾をつままれた。
振り向けば、ぷうっと膨れた佐川くん。
「ちょっと3人で仲良すぎない? 俺のこと忘れてない?」
「あはは、佐川ヤキモチ?」
「マジかー。ヤキモチ妬いてんの? より」
「そんで2人は俺のことからかって遊んでるよね!?」
その2人は俺のこともからかって遊んでるよ、多分。
「しかもさー、あっくんも『七織』って呼んでるのズルくない? 俺だけ『牧瀬くん』なんだけど」
「七織って呼べばいいじゃん。なぁ、七織」
「ぅえ? 俺? いや、俺は別に、何でもいいけど…」
「えっ、じゃあ俺も七織って呼んでいーい?」
「いいよ」
何か…ちょっと不思議な感じする、けど。
「んじゃ俺のことも由音って呼んでー。あっくんみたいによりでもいーよ」
「よりと。より。んー…よりと、かな」
「何か新鮮…!」
「そう?」
慣れないとこっちもくすぐったい感じになるよなぁ。
「七織って滝島とは遊んだりしないの? 仲良いよね?」
「あー…」
「彼女できてからぜーんぜん相手してくれないよ、圭典」
何て答えたらいいのか分からない俺の代わりにあおが答える。
「佐田さんだっけ? 付き合ってるの」
「そうそう」
「そういや2人でよくいるよな」
「空いた時間全部彼女とだよ。休みの日も遊んでくれなくなったし」
「えー、それ淋しいねー。彼女優先なのは分かるけど」
3人の話し声を聞きながら、俺は圭典を想う。
仕方ない。だけど淋しい。それでも諦めないといけない。俺は……『友達』以外で圭典の隣にはいられないから。
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