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第9話

「あっ、じゃあさ、たまには遊ぼーよ! こうやって」 由音の声に、顔を上げる。 何だろうな。顔と同じ華やかな声は、自然と色々上向く感じがする。 「そだね。ね、七織」 「うん」 あおが微笑むから、つられるように頷く。 美少年の微笑みってちょっとずるい。 「急に離れられたら淋しいもんねー。滝島もちょっと味わえば分かるんじゃない?」 「んー…どうだろうね」 あんまり興味ないみたいに首を傾げるあお。 多分なんだけど、あおは俺が圭典のことを好きなのを、気づいている。…そんな気がする。 でも何も聞かれないから、俺も何も言わないでいるけど。 「…あっしくんたちは、その、彼女とか…」 「いないなー」 「いないねー」 「そうなの?」 何か意外。でも…ほしくなったらすぐにできそうな…2人ともカッコいいし。 「七織はー?」 「…いないよ」 俺のは叶わないから。 それに、女の子を好きになれないと思うから。 「幼稚園の時モテモテだったのにな」 「大丈夫だよ! 人生にモテ期は3回あるって言うし!」 「え、待って。俺、由音に慰められてる? 別にモテたいとか思ってないから!」 「おっけ! 自然な出会いを待つ派だね!?」 「そーゆう派閥あんの!?」 「合コン行きたい派と自然な出会いを待つ派」 「あんの!?」 合コン…ちらほら話は聞くけど。 興味がないのは確かで。 「日高くんはー?」 「俺はそういうの間に合ってるから」 「えっ、今の言い方 何か大人…!」 やっぱり、いるのかな。付き合ってる人。 あおとそういう話しないからな。 「大人と言えばさ、数学の柏木先生いるじゃん? 衣替えしたら急にアロハんなったの何で? この前まで普通にワイシャツネクタイじゃなかった?」 「クールビズ?」 話題を変えたあおに目を向ける。隣で由音が首を傾げた。 「あ。あれな、俺の兄ちゃんが言ってたけど、夏の風物詩らしい」 「「風物詩」」 あっしくんお兄さんいるんだ。そんで同じ学校出身なんだ。 「アロハおっけーなんだ」 「まぁ、校長とかも何も言わねーらしいからいいんじゃん?」 「個性的な先生多いよね」 「「分かる」」 「けど校則きつくなくて楽」 「「分かる!!」」 「佐川も幡中も気持ち込めすぎじゃない?」 分かる。 「だってさー、友達の学校、髪染めるのアウトとかって聞いてー。でもこっちはさ、とりあえずちゃんと授業出て提出物出してそこそこ点取ってれば何も言われないし、楽じゃん」

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