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第10話
まぁね、ってあおが言う。
校則ゆるいのは確かに楽だよな。っていうか、校則がどんなかもちゃんと知らないんだけど。
「七織は髪染めないの?」
「俺、は…あんまりマメじゃないから…染め直すのとか、めんどくさそうで」
「あー、確かにね! めんどくさいよ!」
ほんとは、圭典が黒髪好きだから。
俺が染めても似合わないだろうな、って思うのもそうなんだけど、『黒髪いいよね』って圭典が言ったから。
重いなぁ…俺。
由音はアッシュなグリーン。あっしくんは、グレージュっていうの? そういう感じ。
ちなみにあおも髪は染めてない。
…いっそ染めてみてもいいかもな。
いくら俺が黒髪だからって、圭典が振り向いてくれるわけでもなく。
「…染めるなら何色がいいと思う?」
「え、染めたいの? そうだなぁ…あんまり派手じゃない方がいいよねー?」
「幡中の色 派手じゃなくてよくない?」
「えー? あっくんとお揃い?」
「よりの意見聞いてねーし。ミルクティーアッシュとかどうよ。暗めにしてもらって」
あっしくんがスマホをいじって画像を見せてくれる。
「あ、カッコいい。けど似合うかなぁ」
「イメージは変わるよね」
あおも一緒にスマホを覗き込む。
「別に全部じゃなくてインナーカラーでもいいじゃん。そしたら明るめでさ、サイドと襟足と。ちらっと見えんのもいいと思う」
「そっかぁ」
それなら全部染めるよりは…まだ敷居が低く感じるから…。
「…やってみようかな」
何かこう、気分を変えたい。
髪染めたくらいじゃ変わらないかもだけど。
変えてみたい。
そしたらこのグズグズな気持ちも…変わるんじゃないか、なんて。
「俺の従兄 美容師なんだよ。店、紹介しようか?」
「あ、ほんと?」
あっしくん優しい!
「ふっ、佐川つまんなそうな顔してる」
あおが笑いながらそう言って、俺もあっしくんも、由音を見た。
「だってー! 幼馴染み?なの分かるけどー、2人仲良しなんだしー!」
「あっはっはっ!」
「ちょっ、日高くん!? 笑いすぎじゃありませんこと!?」
「ぶふっ」
「ねぇ! 俺の顔見て笑わないで!」
「遊ばれてんじゃん、より」
「っふ、」
「七織も今吹き出さなかった!?」
「だって…っふ、くっ」
「ちょっとー!」
あぁ、由音は素直だなぁ。
って思って。何か羨ましくて、楽しくて。
沈んでいた心が、ふわりと軽くなる。
「ごめん。楽しくなっちゃった」
「楽しいなら、いいよ」
由音はそう言って、穏やかに笑った。
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