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第11話
「ってか笑ったとこ見たの初めてかも?」
「え、そうかな」
笑ってなかったか。なかったな。
「七織、いつ染めるの?」
「あ、もう予約入れるか?」
「2人とも行動早くない?」
「「思い立ったが吉日~」」
あおとあっしくん、性格似てるんだね…。
「けど俺も髪染めた七織早く見たいかも! 楽しみだねー!」
「そ、うかな…?」
流されるままにあっしくんの従兄さんが勤めてる美容室に予約を入れて、なんなら明日でもいいよ!とか言われて、あっという間に予定が決まる。
「七織のビフォーアフター見たいから明日ついてきたい」
「「分かる」」
分かっちゃうなよ。あっしくんも由音も。
「あ、でも邪魔じゃない? 客じゃないのが3人もいて」
「そしたら近くで時間潰せばよくね? テナントビルだからさ、下に100均とか靴屋とか入ってるし」
「じゃあそうしよう。楽しみだね、七織」
「あおはすごく楽しんでるな、って思うよ」
美少年がキラキラしてるもん。
ただでさえ美少年でキラキラしてるのに。
でも俺も楽しみだから、いっか。
モールに着いてまずしたことは、本屋に行ってヘアカタログを見ること。
この色よくない? とか、この色はないなー、とか、そんなことを4人で話しながらページをめくる。そんな他愛ないことが楽しくて、久しぶりに心がふわふわしているのを感じていた。
「喉乾いたー。何か買ってくる」
「あ、俺も行く」
「じゃあ俺も」
「えっ、じゃあ俺もー」
カバンから財布を取り出した時 何かが一緒に飛び出して、床に落ちて固い音がした。
「あ、やば」
「ほい。これみおりんがCMやってるやつだよね?」
「ありがとう」
由音が拾ってくれたのは、朝買ったキャンディだった。
「そう。どんな味なのかな、って思って」
買ったきり開けてなかった。
これから飲み物買おうと思ってたけど…開けてみようかな。
「由音これ食べたことある?」
「ないよ。恋に効くらしいのは知ってるー」
「あれ信じてるの?」
「どうだろ。ま、アメだけで上手くいくなら苦労しないだろうねー」
「だよね」
これで上手くいくなら簡単なのに。
圭典にはもう佐田さんがいるのに。
「味見する?」
「きゃー、七織のこと好きになっちゃうかもー」
「棒読みじゃん。ねー、あっしくん」
「えっ、ちょっ、くれないの?」
「欲しいなら欲しいって言いなよ。一個いいよ。なに味?」
「ありがと。…んー……甘い」
「そりゃそうだろうよ」
あ、袋に書いてあるわ。
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