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第12話

さくらんぼと桃か。 「あっしくんもアメいる?」 「もらう」 「あおは?」 「んー…今はいいや」 「そ?」 俺も食べよ。 あ、これから飲み物買うのに。 「なに味?」 あおが俺と同じこと聞いてきた。 「さくらんぼと桃」 「ふぅん」 この味好きかも。また買おうかな。 恋とかは別として。このアメで恋が成就するならほんとに苦労しないし。 …圭典はもう、佐田さんからもらってるし。 俺のはいらないよね…。 好き、なんて、言える度胸もない。 言えたとして、選んでもらえるはずがない。 それなら、幼馴染みで友達のまま。そのままでいいや。 飲み物を買って、ショップのマネキンを見ながらこれが誰に似合いそう、なんて話しながら歩く。誰ひとりとして買う気はないから、ただ見て話すだけ。 飲み物持ってるし、これ持ったまま店に入るのはちょっとね。こぼしたりしたら大変だから。 「あっしくんっていつもどんな感じの服着るの?」 「俺? シンプルなのが好きだな」 「カッコいい人はシンプルなの似合うよね。俺 平凡だからシンプルなの着ると地味になっちゃうんだよな」 「そしたらグレーとか紺とかより、ちょっと明るい青とか緑とかにしてみればいいんじゃねぇ? 明るい色入るだけで印象とか変わると思うし」 「はぁ~、なるほどぉ!」 おじいちゃんみたいな反応しちゃった。 「確かに七織、グレーとか紺とか多いかもね」 「やっぱそう?」 よく一緒に遊ぶあおが言うなら間違いない。 「ねー、由音は………どんな感情? その顔」 由音を振り向いてみれば、すごく渋い顔をしていた。俺 何か悪いこと言った? 「すごいナチュラルにあっくんのこと褒めるじゃん」 「はぁ?」 「ガキみたいなこと言ってんなよ、より」 あっしくんがからかうように言って笑う。 「あっくん自分がカッコいいって言われたからってー」 「そこなの?」 由音だってカッコいいけど…これで褒めたら本心じゃない感じになっちゃうよな…。 「佐川だっていい男じゃん」 「えっ、そう? そうかな!」 そんなことなかった。 あおがさらっと褒めたら機嫌なおってた! 何だ。それなら俺だって変な気を遣わなくてもいいじゃんね。 「そうだよ。由音カッコいいじゃん」 「そうかな!? えへへ」 照れちゃうのかよ。可愛いとこもあるんだなぁ。 「単純だな、よりは」 「ちょっとあっくん、素直って言ってよ」

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