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第14話
「え、そうなの?」
「うん。でも由音はカッコいいから、シンプルなのがいいな、って」
「そっかぁー」
由音が嬉しそうに笑った。
「……買おうかな」
俺に流されてどうする。
「でも由音の好みの色じゃないならやめときなよ」
「好みじゃないって言うか、選んだことない色だなー、って。けど客観的に似合うって言われるのも着てみたいじゃん?」
「そういうもの?」
俺ほんとに無難な色しか選ばないからなぁ…。
「え、じゃあさ、由音が俺に選ぶとしたら何色?」
「七織はねー、ピンクかな」
「ピンク!?」
「薄い色のピンク」
あ、そっちか…。びっくりした。
「…ピンク着たことない」
「似合うと思うよー?」
そうかな…。
「こういうのとか!」
由音手に取ったのは、ほんとに淡い色のピンク。これなら全く派手じゃない。
「…これって下どんなの合わせればいいの?」
「グレーとかキャメルっぽいのとか、黒も白もデニムパンツも合うよ」
「そっか…」
…買ってみる?
値段は全然高くないし、手持ちで合わせられそう。
何て言うか…ちょっと違う自分になってみたい。圭典への不毛な気持ちを振りきるために。
もちろん、服装変えただけじゃどうもならないとは思うんだけど…気持ちだけでも、ちょっと新しくしたいって言うか…。
「…これ、買おうかな」
「えっ」
「何となく、気分変えたいって言うか…自分じゃ選ばない色だし、新鮮」
由音が目をぱちぱちさせて俺を見た。それから、ひとつ頷く。
「じゃあ俺もあの緑の買ってくるね!」
「えっ?」
「自分じゃ選ばない色だし、新鮮!」
パッと明るく笑って、由音はショップに入っていった。行動早い…。
けど、俺も買おう。
あっしくんとあおに断ると、ピンクのTシャツを持ってレジへ。
「七織がピンク着るとか新鮮! 次 遊びに行く時それ着てきてよ」
「うん」
「由音の緑も落ち着いてていいな。七織センスいいよ」
「そっ、そうかなっ?」
何か照れる。けど、あっしくんにも好評で良かった。あの暗めの緑のTシャツ。
俺だと地味になっちゃうと思うけど、由音みたいな派手なイケメンには似合うと思うんだ。
「ねー、じゃあ今度この4人でどこか行こうよ! あっ、名案じゃない!?」
「よりにしては名案」
「ちょっとあっくん」
俺は思わずあおを見た。
「いいじゃん。楽しそう。あ、でも再来週の土日は避けてね。俺もう予定入ってるから」
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