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第17話

樋口さんが俺を気遣うようにちょっと笑う。 「…苦手、とは、ちょっと違う」 苦手じゃなくて、嫉妬。 「あの…俺多分ね、まだ圭典が佐田さんと2人でいるの、慣れてないんだ。あの、美男美女だし、すごいお似合いだとは思うんだけど…」 2人だけで世界が完結していると思うくらいには、お似合いだ。だけど。 淋しい。 「俺は圭典との付き合い結構長いから、彼女できたら彼女優先なのも全然、構わないし、分かるし。なんだけど…一緒に遊んだり、全然なくなって、ちょっとあの……淋しい…」 これは子どもじみた独占欲だってことを、俺は誰よりよく理解していた。だけど多分、樋口さんは別に取ったんだろう。 「そっかぁ~。そう言えば、学校来んのも帰るのもお昼も、全部完全にマナミちゃんとになったもんねぇ~。それは淋しいよねぇ…」 分かるよ、マッキー。って言いながら、樋口さんが俺の背中を叩いた。 「え、でもさぁ、休みの日は?」 「…佐田さん」 「え。何それ!」 「全部、佐田さん。だからちょっと…淋しい」 「分かるよマッキー!! それは淋しい!! あたしだって、昨日まで一緒だった友達に全部彼氏優先されたら拗ねるし怒る!!」 樋口さん、声でかいよ…。 けど、共感してくれて嬉しい。 「何かさぁ、男子って彼女できても友達優先みたいなイメージだったなぁ~」 そうだったら俺も嬉しかったな。けど、そうだったら余計吹っ切れないかもな。 「…でも、他に遊ぶ人できたし、いいんだ。これで」 あっしくんと再会して、由音と知り合って。 「マッキー健気だねぇ」 「健気?」 「たまには一緒に遊べー!って滝島くんに言ってもいいと思うなー」 言ってもいいなら、言いたい。でも、言えない。余計なことまで言いそうで。 「でもその滝島くんはさ、佐田さんを大事にしたいんだよね。なら俺も、圭典の気持ちを大事にしたいんだよ」 「マッキー健気…!」 「それは大げさ」 ちょっと笑って樋口さんを見ると、樋口さんは目を潤ませていた。 「滝島くんは幸せ者だよねぇ。こんなに優しい友達がいて。マッキー粗末にすんな、ってあたしが言っといてあげる!」 「ありがと。気持ちだけでいいよ、大丈夫」 そう言ってくれる人がいるだけで、俺は充分。これでいいんだ。淋しくても圭典からちゃんと離れて、圭典以外に目を向けよう。それで、いつか…圭典じゃない人を、好きになろう。

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