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第18話

「七緒いる?」 俺が勝手にしんみりしていたら、不意にそんな声が聞こえた。 顔を上げれば、ドアのところにあっしくん。 「あっしくん。おはよう」 「はよ。ちょっといいか?」 「うん」 樋口さんに断って席を立つと、俺はあっしくんのところへ。あっしくんの顔見たら、何だかホッとした。 「どしたの?」 「七緒、今日昼一緒に食わねぇ? 日高くんも」 「えっ、いいの?」 「それを俺が聞いてんだけど」 あっしくんに笑われた。 「土曜日のさ、待ち合わせ場所とかもちゃんと決めてなかったし。七緒と日高くんがよければ、昼に話できたらな、って」 「うん! あおにも言っとく」 「じゃあ昼休みにな。っつっても、放課後も一緒なんだけどな」 あっしくんの手が伸びて、俺の髪に触れる。 「黒髪の俺は今が見納めだよ」 「ふ、」 笑われた。今の笑い方カッコよくない? ずるくない? 「前髪にカラー入れてもいいかもな」 「何それカッコいい。俺がやっても変じゃない?」 「何で変? 自分がいいならいいんだよ、こういうのは」 「そっかぁ」 前髪か。美容師さんと相談しよ。 「色は決めたのか?」 「うん。昨日教えてもらったミルクティーアッシュって色。そんな派手じゃないし。あっしくんの髪もちょっと似てるよね、色」 「そうだな。お揃い、ってよりが拗ねる」 「ふはっ。由音と昨日会ったばっかなのに」 「なれなれしくてうざかったら言っていいからな」 「それこそ拗ねそうだよ」 確かに、って笑って、「じゃあな」ってあっしくんは自分の教室に戻って行った。 あっしくん来てくれてよかった。話してたら気持ちが落ち着いた。 「マッキー、幡中くんと仲良かったっけ?」 「幼稚園一緒だったんだよ。再会したの昨日なんだけどね。幼稚園の時はいつも一緒に遊んでた」 「えぇ~、いいなぁ~」 席に戻れば、樋口さんが意外そうに話しかけて来た。 いいなぁ~、ってことは…あっしくんのこと好きなのかな? 恋愛的な意味でなく、憧れ的な感じ? 「幡中くんクールだし優しいからさぁ~、結構狙ってる子いんだよねー」 「カッコいいもんね。分かる」 「さっき言ってた他に遊ぶ人ってぇ、幡中くんのこと?」 「うん。あと、由音も」 「佐川とも仲良くなったのぉ?」 俺が頷いたところであおが教室に入ってきて、俺はあっしくんたちとのお昼の約束をとりつけたのだった。

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