19 / 99
第19話
「七織ー、日高くん、ごはん行こー!」
デジャヴ。
昼休みに入ると、由音とあっしくんがやって来た。
こうやって改めて見ると…2人とも背ぇ高いし顔も整ってるし、圧倒されるなぁ。
「七織、行くよ」
「ちょっと待って、財布…」
クラス中の注目を浴びても平気なあおが強い。
「ごめん、お待たせ」
「んーん、全然!」
行こう、と促されて、4人で学食へ向かう。今日なに食べる? カツ丼。って会話が俺の耳をすり抜けていく。
「七織、どうした? ボーッとしてる?」
あっしくんに声をかけられて、俺は首を振った。
「や、何か…不思議だな、って思って。昨日まで知らなかったのに、一緒に帰ったりお昼食べたり。今朝ね、クラスの女子に、あっしくんたちと仲良くなったの羨ましがられて。それで…俺、あの、いいのかなぁ、って」
「何が『いいのかな』?」
「七織ってたま~に卑屈になる時あるよね」
あおにズバッて言われた…!
「ひ、ひどい…」
「ひどくないよ。好きで七織といる俺たちにひどいでしょ」
「……」
それを言われると何も言えない。
「あー…何? 自分が一緒にいていいのかな?って思ったってことか?」
「絶対そうだよ」
あおに断言された。…まぁ、そうなんだけどさ。
「え。七織、俺たちといるのやだ?」
由音が何でか焦ってる。
「嫌じゃないよ。ただあの、俺が鈍感だったから知らなかっただけで、狙ってる子結構いるって…それで、だから…」
「えっ、俺狙われてるの!?」
「七織、こいつアホだから気にしなくていいぞ」
「あっくんひどい!」
由音は絶対スナイパー的な『狙われてる』を想像したと思う。
「俺は七織といるの好きだったから一緒にいたし、今もそれは変わんねーよ。久しぶりに会えて嬉しかったし、色々話できんのも楽しい。だから、周りがどうとかより、俺らの気持ちを聞いてくれた方が嬉しいな」
「はい」
「幡中には素直じゃん」
「あっしくんの言い方が優しいからだね」
「はー? 俺は優しくないって?」
「日高くん、顔」
美少年が険悪な顔してる。ダメだよ、それ。
「あおはたまにズバッて言うから」
「ズバッて言わなきゃ分かんないじゃん」
「厳しいのも優しさなんじゃねぇかな」
あっしくんに宥められる俺たち。そして置いてけぼりの由音。
「よく分かんないけど俺も七織好きだよ!」
「ありがと」
そうだね。周りの反応より、目の前の人たちの反応を大事にしていこう。
ともだちにシェアしよう!