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第19話

「七緒ー、日高くん、ごはん行こー!」 デジャヴ。 昼休みに入ると、由音とあっしくんがやって来た。 こうやって改めて見ると…2人とも背ぇ高いし顔も整ってるし、圧倒されるなぁ。 「七緒、行くよ」 「ちょっと待って、財布…」 クラス中の注目を浴びても平気なあおが強い。 「ごめん、お待たせ」 「んーん、全然!」 行こう、と促されて、4人で学食へ向かう。今日なに食べる? カツ丼。って会話が俺の耳をすり抜けていく。 「七緒、どうした? ボーッとしてる?」 あっしくんに声をかけられて、俺は首を振った。 「や、何か…不思議だな、って思って。昨日まで知らなかったのに、一緒に帰ったりお昼食べたり。今朝ね、クラスの女子に、あっしくんたちと仲良くなったの羨ましがられて。それで…俺、あの、いいのかなぁ、って」 「何が『いいのかな』?」 「七緒ってたま~に卑屈になる時あるよね」 あおにズバッて言われた…! 「ひ、ひどい…」 「ひどくないよ。好きで七緒といる俺たちにひどいでしょ」 「……」 それを言われると何も言えない。 「あー…何? 自分が一緒にいていいのかな?って思ったってことか?」 「絶対そうだよ」 あおに断言された。…まぁ、そうなんだけどさ。 「え。七緒、俺たちといるのやだ?」 由音が何でか焦ってる。 「嫌じゃないよ。ただあの、俺が鈍感だったから知らなかっただけで、狙ってる子結構いるって…それで、だから…」 「えっ、俺狙われてるの!?」 「七緒、こいつアホだから気にしなくていいぞ」 「あっくんひどい!」 由音は絶対スナイパー的な『狙われてる』を想像したと思う。 「俺は七緒といるの好きだったから一緒にいたし、今もそれは変わんねーよ。久しぶりに会えて嬉しかったし、色々話できんのも楽しい。だから、周りがどうとかより、俺らの気持ちを聞いてくれた方が嬉しいな」 「はい」 「幡中には素直じゃん」 「あっしくんの言い方が優しいからだね」 「はー? 俺は優しくないって?」 「日高くん、顔」 美少年が険悪な顔してる。ダメだよ、それ。 「あおはたまにズバッて言うから」 「ズバッて言わなきゃ分かんないじゃん」 「厳しいのも優しさなんじゃねぇかな」 あっしくんに宥められる俺たち。そして置いてけぼりの由音。 「よく分かんないけど俺も七緒好きだよ!」 「ありがと」 そうだね。周りの反応より、目の前の人たちの反応を大事にしていこう。

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