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第22話

あおに言われて、俺は頷く。せっかくだし、それに由音が選んでくれたやつだから、由音と遊ぶ時に着てくるのがいいよね。 由音も昨日の着てきてくれるって言ってるし。 まだ日にちあるけど、合わせる服決めておこう…。Tシャツピンクだから、グレーのパーカーとデニムパンツでいいかなぁ。 「遊びに行くのもだけど、俺は今日も楽しみなんだよね」 由音がそう言って身を乗り出す。 「七緒が髪染めるから」 「そうそう!」 あおの言葉に大きく頷いて、由音は満面の笑みを浮かべた。 「変化を一番に見れるっていいね! 明日、クラスのみんなの反応とかも教えてよ」 「そんな派手にするわけじゃないし、あんまり反応ないかもよ?」 「そうかなー」 「七緒染めるの初めてだから、結構反応あると思うな」 そう言いながら、あおが俺の髪をつまんだ。 似合うかどうかが一番心配なんだよな。けど、自分がいいならいい、ってあっしくんも言ってたし。 「俺が勧めておいてアレだけど、髪染めて土曜も遊びに行くとか大丈夫か?」 「お金の話? 毎月のお小遣い余った分貯めてあるから大丈夫。あんまり物買ったりしないし…」 「偉いな」 あっしくんは褒めてくれるけど、いまいちオシャレとかトレンドが分かんないだけなんだ…。 俺は誤魔化すように、へへ…、と笑った。 午後の授業が終わると、俺たちはあっしくんの従兄さんが勤める美容室へ。 「1時間くらいかかると思うから、俺らは下の100均とか靴屋で時間潰してるな」 そう言って3人ともさっさとお店からいなくなり…。 あの…美容室って……オシャレ空間だよね…。俺浮いてないかな…大丈夫かな…。初めて来た場所だし落ち着かない…。 俺はそわそわした心持ちで、渡された用紙に名前や住所なんかを記入していく。席に案内されて待っていると、きれいなアッシュグレーの髪のお兄さんがやって来た。 「こんにちは。今日担当する王司(おうじ)です。よろしくお願いします」 「あっ、よっ、よろしくお願いしますっ」 鏡越しに にこりと微笑まれ、心臓がドキッと跳ねた。この美容師さん、美形だ…。華がある。 俺はスマホを操作して画像を見せながら、美形な美容師さんとカラーの相談をしていく。 「あの、このミルクティーアッシュがいいな、って思ってて」 「染めるの初めて? 結構ワクワクするよね。インナーカラーって聞いてるけど、この画像みたいにサイドから後ろまでぐるっと入れる?」

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