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第25話

変わりたい。 変わりたかったはずなのに。 俺はまだ、圭典に振り回されている。態度を気にして、顔色を気にして、バカみたいだ。 圭典が特別な意味で俺を見ることなんて絶対ないのに。 4組を覗くと、そこに由音とあっしくんはいた。 「ねぇ、あっくんヤバい。俺 数学今日当たるヤバい」 「予習してこい」 「ヤダ忘れた」 「バカなの?」 普段通り(?)の2人の会話に、俺は小さく息を吐く。 「あっしくん。由音」 名前を呼べば、2人はすぐにこっちを振り向いた。 「七織じゃん。どしたのー? おはよう」 「おはよ。周りの反応どうだった?」 「おはよう。あのねぇ、色褒められた。似合うって」 由音がパッと華やかな笑顔を向ける。あっしくんも穏やかな笑顔と声を向けてくれて、苦しかった胸が、少しだけ楽になった。 「それ言いたくて来てくれたの? 七織かわいーね。冷たいあっくんとは大違い」 「七織については同意見。でも数学に関しては自業自得だからな?」 「教えてよぅ…」 「最初から素直にそう言えよ。七織、こっち来てよりを励ましてやってくれ」 「そこ座っていいの?」 「まだ来てないし大丈夫」 それなら。俺はあっしくんが指差した席に座った。何さんか知らないけど、椅子お借りします。 「前髪に色入れてよかったな。やっぱ印象違うわ」 「クラスの人にも同じようなこと言われた」 あっしくんが俺の前髪を、ちょい、と触る。 「黒いのもいいけど、これだと遠くから見ても七織だ!って分かるもんね」 「目印?」 由音の言い方に思わず笑ってしまう。 「じゃあ土曜日は俺の前髪を目印に集合してね」 「集合場所、噴水前から七織前に変えなきゃ」 「バス停みたいな言い方するんじゃねぇよ」 「次は~」 「やめろ、アナウンスするな。早く数学やれ」 あっしくんに急かされて、由音が唇を尖らせながらシャーペンを手に取った。 「俺も七織と楽しくおしゃべりしたいー」 「終わったら楽しくおしゃべりしろ。それまで俺が楽しくおしゃべりしてるから」 「由音、頑張って」 「頑張るー」 そう言えば、励ましてやって、って言われてたんだった。 由音を励ましつつあっしくんが由音に所々教えつつ、予鈴が鳴るまで俺は2人の側に居続けた。 ちなみに俺が椅子を借りてた席の人は、予鈴が鳴ってから「セーフ!!」って慌てて駆け込んで来ていた。

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