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第27話
「納得した?」
すごく迷惑そうなあおの声。
「圭典さぁ、佐田さんと付き合うからってさっさと離れてったくせに、何なの? いちいち七織や俺のすることに口出してこないでくれる?」
「別に、さっさと離れてはないだろ」
「学校行くのも帰るのも、昼も休みの日も全部佐田さんとで? 遊びに誘っても佐田さんと行くっていつも言うじゃん。それでどの口が言ってんの? あぁ、別に彼女優先すんのは全然構わないよ。佐田さん可愛いし、誰かにちょっかい出されたら嫌だもんね。けど普通はそういうの先に言うでしょ。彼女が可愛くて心配だからしばらく彼女優先する、って言ってくれれば、こっちだって『いいよ』って言えるし。圭典そういうの何にもなくて突然行動変えて、なのにこっちには『俺に言えよ』って言うわけ? おかしくない?」
「……」
あおは佐田さんには聞こえないように声を抑えてるけど、隣にいる人には聞こえちゃうよね。隣の席の菊野さんが、ちょっと気まずそうにしている。俺が仕草で『ごめんね』と謝ると、菊野さんは小さく笑って首を振った。
「…髪、染めたの変? 割と、家族とかも、今朝も結構いい反応だと思ったんだけど」
「似合ってるよ。昨日も言ったけど」
「ありがと」
あおはさらっと言ってくれる。けど。
「…変、って言うか、見慣れないし、俺はあんまり好きじゃない」
「…、」
『好きじゃない』のは髪の色なのに、自分そのものを言われたような気がして一瞬息が詰まる。
「あくまでも圭典個人の感想でしょ。本人が気に入ってるのにそういうこと言うのどうかと思うよ」
あおはそう言って、隣の菊野さんを見た。
「菊野さんも七織の髪いいね、って言ってたよね」
「え? うん。牧瀬くんずっと黒かったし、色入ると新鮮だよね。似合ってるよ」
「ありがとう」
「どこでやってもらったの?」
「えぇと、leggiero(レジェロ)っていうところ」
「あ! 知ってる! すごぉ~くイケメンの美容師さんがいるって噂のところだ!」
「そうなの? あ、でも…」
昨日担当してくれたあっしくんの従兄さん、華のある美形だったなぁ。
「イケメン美容師さんいた?」
「うん、いた。すごいキラキラした美容師さんいた」
「いいなぁ~。そのイケメン美容師さんさぁ、4組の幡中くんにちょーっと雰囲気似てるんだって」
「あ、じゃあやっぱりそう。従兄さんって言ってたから」
「そうなんだ!」
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