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第30話

「あ、ねーそう言えばさ…」 学食でごはんを食べていると、由音が何となく言いづらそうに口を開いた。 今日の俺は中華メニューの日替わりを頼んで、約束通り由音とおかずを交換した。お皿には、春巻きの隣にもらった唐揚げが2つのっている。俺はその唐揚げに箸を伸ばしながら由音を見た。 「えっとさぁ、さっき七織たちの教室行ったら滝島に睨まれた…?感じがして…俺何かやらかしたかな?」 俺たちが圭典と親しいことを知っているから由音はすごく言いづらそうで、ちょっと窺うように控えめにこっちを見ている。 「あ、いや、気のせいかもしれないんだけどっ」 めっちゃ気を遣わせている。 「ごめん、多分気のせいじゃないかも…」 「あいつ変でさぁ、七織が髪染めたの佐川たちに変な影響受けたんじゃないかとか言ってんの。気にしなくていいよ」 ズバッと真相をばらしたあおは、大盛りラーメンを豪快にすすった。 「あ、そーなの?」 由音の視線が俺に向く。 「うん。あの、今まで髪染めたことなかったし、急に2人と親しくなったから…何か、そんな誤解してるみたいで…。そんなことないって言ったんだけど…ごめんね」 「そういうことかぁ。いいよ、七織のせいじゃないじゃん。謝らなくて大丈夫!」 「大体勝手なんだよね」 「日高くん、辛口だな」 ペッと吐き捨てるような口調のあおに、あっしくんは苦笑い。 「友達思いなんじゃねぇの? 七織って優しくてちょっと大人しいタイプだし、傍から見てると俺らみたいなのが近づいたら少々心配にはなるかもな」 「俺、髪の色緑だしね」 アッシュグリーンの髪を摘まみながら由音が笑った。 「うちの学校 校則ゆるゆるだから治安悪そうな頭の色してる人はいるけど治安は悪くないよね」 「何だかんだ皆割と真面目に授業受けてるもんねー」 それはそう。 「ま、圭典は気にしなくていいよ。変わらず七織と仲良くしてやって」 「それはもちろん!」 「ほんとごめんね…」 「一緒にはいないけど、七織のこと気にしてるんだな、滝島は」 「そう、かな…」 分かんない。圭典が、分からない。 一緒にいるのスッパリやめたのに、気にしてるって何だろう…。そんなの惨めだ。 だって…。 「けどまぁ、気にかけるんなら淋しそうな顔させんじゃねぇよ、って思うけどな」 「言うね~、あっくん。でも俺も同意見~。中途半端な優しさだよね。そういうの残酷」

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