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第32話

すごい照れてしまう。 けど、嬉しい。誰かに自分をこんなに肯定してもらったことってあるかな。 2人は人を褒めるのが上手だな。いいな、そういうの。 「でもさ、滝島もこうやって七織たちと過ごす時間作ればそういう勘違いみたいなのもなくなりそうなのに」 「髪色きっかけにそういう時間も元に戻るといいな」 由音の言葉にあっしくんも頷いてくれてるけど、どうかな…。 「圭典次第じゃない? だって俺たちは変わってないし。あ、まだメンマあった」 「俺別に…由音とあっしくんといるの楽しいし、圭典じゃなくても大丈夫だよ。あおもいてくれるし」 だって今は圭典といるのが怖い。っていうか、ちょっと、しんどい。 楽な方に逃げてるって言われたらそれまでなんだけど、なにも言われずに離れられちゃったのが、俺は多分結構堪えてるんだと思う。特別な意味で好きだったし。そうでなくてもずっと一緒だったから、余計に。 何だ、すぐに捨てちゃえるような関係だったんだ。って、俺が勝手に落胆してるだけでもあるんだけど。 …何だろう。俺、失恋して、嫉妬してるだけじゃなくて、拗ねてるのかも知れない。子どもだ。 「滝島は自分が知らないうちに大事なものを取りこぼすタイプだな」 「言うね~、あっくん」 「言い得て妙じゃない?」 「??」 どゆこと? 俺以外はみんな納得してる感じ? 『言い得て妙』って評したあおを見るけど、本人はご機嫌でラーメンをすすっていた。 食べ終わってから、4人で学食を出る。来る時と同じように、この前買ったマンガの話とかゲームの話とかテレビの話とか、他愛もないことを話しながら。 中庭が見える渡り廊下まで来た時、向こう側に佐田さんが立っていた。ひとりで。 珍しい、と思った時、佐田さんが口を開いた。 「牧瀬くん」 そう、俺の名前を呼んで。 「あ…え、俺…?」 「うん。あの、急にごめんね。その、圭典くんのことで…」 「あ、えっと…ごめん、みんな先に戻ってて」 俺が言うと、あおはちょっと顔をしかめた。けど、「行こう、2人とも」って由音とあっしくんに声をかけてくれた。 2人になって、俺は少しの緊張と恐怖と不安とでない交ぜになった感情のまま佐田さんを見た。 「…えぇと、圭典のことって…?」 佐田さんは、何となく申し訳なさそうな表情で俺を見た。 「…ごめんね。圭典くんのこと、っていうか…あの、私、その…牧瀬くんに、嫌われてる、かな…?」

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