理不尽な怒りが込み上げて、俺はそっと息をついた。 佐田さんと教室に戻ると、あおがくっっそめんどくさそうな顔で圭典の相手をしていた。 すごいあからさまに嫌そうな顔してる…。 「七織、こっちきて。佐田さんこいつ引き取って。くそうざ」 「あおい、」 「もーうざいから話しかけんな。俺は七織に癒されるの！」 そう言って、あおは勢いよく俺に抱きついた。 「おわっ」 美少年に抱きつかれると、いくら友達でもドキッとするよね。 「あおは圭典嫌いなの？」 「うん、嫌い」 淀みない返事。圭典があおの向こうで顔をしかめた。 「圭典くん、友達大事にしないと日高くんだけじゃなくて牧瀬くんにも嫌われちゃうよ？」 「七織は俺のこと嫌わないよ」 事実だけど…何かイラッとする。 「自信かじょー。七織だって人間なんだから、圭典のこと嫌いになる可能性はゼロじゃないよ。ってか嫌われちまえ」 「あおい…どれだけ俺のこと嫌いなんだよ」 圭典は呆れたような口調でそう言ってため息をこぼした。 「だって七織は今、圭典より佐川や幡中の方が好きだもんね？」 「え？」 俺？ 「ぅんと、まぁ、2人すごい優しいし、一緒にいるの好きだよ。楽しいし」 「俺の方が七織と長くいたから」 「ばーか。圭典ばーか。時間の長さなんて関係ないんだよ」 あおはこんなに好戦的だったかなぁ…。 「俺、あおも好きだよ」 「ふーん。知ってる」 素っ気ない。けどこれはあおの照れ隠しって分かってるから。そういうところ可愛い。 「…何で俺のことは好きって言わないの？」 「は？ 言ってもらえると思ってんの？」 切り捨てたの俺じゃない。あおいさん。 「もう圭典あっち行って。七織は俺のだから」 「あおい」 「うっさい」 うぅん…。こうなったらあおの機嫌はなかなかなおらないぞ。圭典もそれは経験で分かってるんだろう。ため息をつくと、降参、とでも言うように軽く両手を挙げた。 そもそも、2人は何の話してたんだろう。 「圭典、あおは俺が宥めとくから…」 「仕方ないな…」 「仕方ないとか誰が言ってんだっつーの」 「あお、ちょっとほら、落ち着いて」 背中をとんとん、と軽く叩いて、あおを宥める。そう言えば、小学生の時も2人はよくケンカしてたなぁ。俺は2人の間であわあわしてただけだったけど。 「あ、飴あるよ。食べる？」 「んーん。こうやってれば大丈夫」