39 / 99
ビタミン・オレンジ
「あっ、おはよう。2人とも」
「はよ。今日は一緒なんだな」
翌朝あおと学校に行くと、待っていたのは由音とあっしくんだった。2人とも、ご丁寧に俺とあおの席にちゃっかり座っている。
「おはよう…?」
「おはよ。佐川、そこ俺の席」
「日高くん、ブレないね~」
あっしくん、そこ俺の席。って俺も言った方がいい?
「悪いな、占拠してて」
あっしくんがそう言いながら立ち上がって、俺は小さく首を振った。むしろ、圭典より先に2人に会えてよかった。
「ううん。あの、何かあった…?」
机にカバンを置きながら2人に聞くと、あっしくんも由音もちらっと顔を見合わせた。
「うーん…何かあったって言うか…」
「余計なお世話かも知れねぇけど、昨日七織元気なかったからさ。日高くんいるから俺らはあんまり首突っ込まねぇ方がいいかな、とは思ったんだけど」
「まぁ、要はちょっと心配だったんだよね、ってこと。でも昨日より大丈夫そうだね、よかった」
由音もあっしくんも、俺の顔を見て穏やかに微笑んだ。2人にも、心配させてしまっていた。
「あの、ご…」
いや、ここは『ごめん』じゃなくて『ありがとう』だよな。
「ありがとう。ちょっとしんどいことがあって、でも、あおに話聞いてもらってた」
「そっか。あのさ、あんまり無理しちゃダメだよ」
「うん」
由音の声が優しくて、素直に頷く。
「って言っても俺たちまだ付き合い浅いし、あんまり色々話せないだろうけど…でもその、七織が元気ないと、やっぱり淋しいし。俺たちにもできることあったら遠慮しないで言ってね」
「詳しい内容まで話せなくていいからさ、楽しいことしたいとか慰めてほしいとか励ましてほしいとか、そういうの教えてくれたらちゃんと考えるから。独りでつらい思いすんのはナシな」
「…っ、うん。ありがとう、2人とも」
そっか。
あお以外にも、こんな風に言ってくれる人たちがいる。圭典がいなくなっても、きっと俺は大丈夫。
「今度はちゃんと、頼らせてもらうね」
「いつでもいーよー」
由音がふざけて両腕を広げる。昨日までの俺は、それを笑ってかわしてたと思う。けど、今日は。
「えいっ」
両腕を広げた由音の胸に、飛び込んだ。
「あっくん! 七織がデレた!」
「ははっ、よりの顔」
「佐川びっくりしすぎじゃない?」
「えぇ?」
優しさに甘えて、ゆっくりでも強くなりたい。
もう泣かないように。
ともだちにシェアしよう!