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ビタミン・オレンジ

「あっ、おはよう。2人とも」 「はよ。今日は一緒なんだな」 翌朝あおと学校に行くと、待っていたのは由音とあっしくんだった。2人とも、ご丁寧に俺とあおの席にちゃっかり座っている。 「おはよう…?」 「おはよ。佐川、そこ俺の席」 「日高くん、ブレないね~」 あっしくん、そこ俺の席。って俺も言った方がいい? 「悪いな、占拠してて」 あっしくんがそう言いながら立ち上がって、俺は小さく首を振った。むしろ、圭典より先に2人に会えてよかった。 「ううん。あの、何かあった…?」 机にカバンを置きながら2人に聞くと、あっしくんも由音もちらっと顔を見合わせた。 「うーん…何かあったって言うか…」 「余計なお世話かも知れねぇけど、昨日七織元気なかったからさ。日高くんいるから俺らはあんまり首突っ込まねぇ方がいいかな、とは思ったんだけど」 「まぁ、要はちょっと心配だったんだよね、ってこと。でも昨日より大丈夫そうだね、よかった」 由音もあっしくんも、俺の顔を見て穏やかに微笑んだ。2人にも、心配させてしまっていた。 「あの、ご…」 いや、ここは『ごめん』じゃなくて『ありがとう』だよな。 「ありがとう。ちょっとしんどいことがあって、でも、あおに話聞いてもらってた」 「そっか。あのさ、あんまり無理しちゃダメだよ」 「うん」 由音の声が優しくて、素直に頷く。 「って言っても俺たちまだ付き合い浅いし、あんまり色々話せないだろうけど…でもその、七織が元気ないと、やっぱり淋しいし。俺たちにもできることあったら遠慮しないで言ってね」 「詳しい内容まで話せなくていいからさ、楽しいことしたいとか慰めてほしいとか励ましてほしいとか、そういうの教えてくれたらちゃんと考えるから。独りでつらい思いすんのはナシな」 「…っ、うん。ありがとう、2人とも」 そっか。 あお以外にも、こんな風に言ってくれる人たちがいる。圭典がいなくなっても、きっと俺は大丈夫。 「今度はちゃんと、頼らせてもらうね」 「いつでもいーよー」 由音がふざけて両腕を広げる。昨日までの俺は、それを笑ってかわしてたと思う。けど、今日は。 「えいっ」 両腕を広げた由音の胸に、飛び込んだ。 「あっくん! 七織がデレた!」 「ははっ、よりの顔」 「佐川びっくりしすぎじゃない?」 「えぇ?」 優しさに甘えて、ゆっくりでも強くなりたい。 もう泣かないように。

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