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第40話

あっしくんがふざけて両腕を広げてくれたから、俺はそっちにも飛び込んだ。 2人とも俺より大きいから、腕の中にすっぽりされてしまう。すっぽりするのって割と居心地いいんだな…。 「ありがと。元気出た」 「そう? ならよかった。ハグって癒し効果あるって言うもんね」 「もう1回するか?」 「する!」 あっしくんは冗談で言ったのかもだけど、俺は本気にするぞ。もう1回あっしくんに抱きついて、由音が「俺も~!」とふざけて俺ごとあっしくんに抱きつくのを見たあおが笑っていると、「何してんの?」と後ろから冷たい声がかかった。 振り向けば、どこか不機嫌そうな圭典と、びっくりした顔の佐田さん。2人の姿に、胸がぎゅっと痛くなる。頭では納得できているけど、慣れるのにはまだ時間がかかりそう。 「何って遊んでるだけじゃん」 いけないの? って、あおが皮肉っぽい笑みを浮かべる。今日も好戦的…。 圭典がため息をついた。 「昨日から何なの、あおい」 「は? 自分の胸に手ぇ当てて考えればすぐ分かるんじゃないの?」 「そういうところが、」 「ちょっ、ちょっとストップ」 ケンカが始まりそうで、俺は慌てて2人の間に割って入った。朝からこれはいかん。朝じゃなくてもダメだけど。 「あの、俺は大丈夫だから」 あおにこそっと伝えると、ちょっと顔をしかめられた。全然大丈夫じゃないじゃん、って言われてるみたい…。気のせいかな…。 「ふふふ。圭典くんも日高くんも、牧瀬くんがいないとダメなんだね」 佐田さんが可笑しそうに言う。 「…そんなことないと思うよ」 むしろ俺がいなくても、圭典は大丈夫。そんな風に思ってしまう自分が嫌だけど、もうこれはどうしようもない。俺が、圭典を吹っ切るまでは。 「まぁ、別に七織が」 「あっ!!」 圭典が何か言いかけた時、由音が突然声を上げた。みんなびっくりして由音に視線が集まる。 「声でけーよ、より」 「ごめーん。咄嗟に調節出来なかった」 「けどまぁ、ナイス」 あっしくんと由音は、2人にしか分からない会話をしてる。 と、思ってたらあっしくんはこっちを見た。 「そう言えばお菓子の自販機中身入れ替わったの知ってるか?」 「えっ、そうなの?」 「まだ時間あるし、見に行ってみねぇ?」 「行く行く! あっでもお金持ってくと買っちゃうから手ぶらで行く」 「七織その辺しっかりしてんね~。俺なら財布持ってっちゃう」 由音がそう言ってけらけら笑った。

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