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第42話

4限目が終わると、俺とあおは連れ立って4組へ。昨日までは由音たちの方が早く終わってたけど、今日は珍しく俺たちの方が早く終わったっぽい。 「七緒今日なに食べる?」 「どうしようかなぁ。久しぶりにパスタ食べようかな。和風きのこ」 「パスタか。俺何にしよう」 教室のドアが開くのを待ちながらそんな話をする。昼休みに入ってざわざわし始めた廊下を、圭典が佐田さんと向こうに歩いていく姿が見えた。 親密そうなあの距離が、眩しくて羨ましくて。でも絶対に自分には手に入らないものだと分かったから。 もう、羨むのはやめよう。 「…七緒」 「何?」 あおの声に、視線を引き戻す。きっと、あおは俺が何を――誰を見ていたのか知っている。だから俺はちょっと笑って見せた。 「大丈夫だよ。ちゃんと諦めるために時間は必要だけど。…多分、しばらく追いかけちゃうだろうけど」 「無理するくらいなら、話してよ?」 「うん。ありがとう」 俺が頷いた時、教室の中が少し騒がしくなった。授業終わったかな。 先に先生が出てきて、後からみんな廊下に出てくる。目当ての2人を見つけて、俺は軽く手を振った。 「お待たせ」 「そんな待ってないよ。大丈夫」 「でもお腹すいたから行こ」 あおはそう言うとさっさと学食へ向かって歩き始めた。俺たちも追いかけて隣へ並ぶ。 「日高くん、今日何食べるの?」 「うーん、唐揚げ」 由音に聞かれて、あおはちょっと悩みながら答えた。 「唐揚げかぁ。俺昨日食べたから…あっくんは何食べる?」 「日替わり」 「今日の何?」 「チキン南蛮」 今日チキン南蛮なんだ…そっちも美味しそうだな。 「七緒はー?」 「あっ、俺パスタ」 話を振られて慌てて答える。 「でもチキン南蛮も美味しそう」 「ひとついるか?」 「ありがとう。いいの?」 あっしくんっていつもそう言ってくれるよね。 「パスタ一口くれれば」 「そんなの全然構わないよ」 「あっくん、俺今日ハムカツ頼むから俺とも1個交換して〜」 「まぁいいけど」 「え、じゃあ俺とも1個交換して」 「いいよ」 あおにまで言われて、あっしくんは吹き出しながら快諾した。いいんだ。 「幡中は食べ物にあんまり執着しないタイプ?」 「どうかな。パスタもハムカツも唐揚げも好きだし、ブロッコリーと交換って言われたらさすがに断るけど」 「それは断るんじゃなくて怒っていいと思うよ」 俺もそう思う。

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