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第44話

甘酸っぱいタレの絡んだチキンの表面がテラテラ輝いている。たっぷりのタルタルソースがかかったそれは、視覚的に俺の胃袋をものすごく刺激した。 ぐぅ、とお腹が鳴って、隣に座ったあおが思わずといった感じに吹き出す。 「七織の腹は元気だね」 「本体も元気ですけど?」 俺の文句をさらっと流して、あおもあっしくんとおかずを交換。片頬を不満げに膨らませて見せると、あおは笑いながら俺の頬を両手で挟んだ。 ぷすっと唇から空気が漏れる。 「仲良しだな」 そんな俺たちを見たあっしくんはそう言って穏やかに笑った。由音は既にごはん食べ始めてた。 「そ。俺と七織は仲良しなんだよ」 「2人が戯れてるのって何かほっこりするよね〜」 由音はそう言いながらハムカツをがぶり。 うん。俺も食べよう。 フォークにパスタを巻き付けて口へ運ぶ。久しぶりに食べたけど、やっぱおいしい。あっしくんも一口食べて、「これ旨いな」って言った。 「でしょ。俺、学食のパスタだとこれが一番好きなんだよね」  「学食でパスタ食べたことなかったな。今度食べてみるわ」 「うん!」 一番好きとは言ったけど、そもそも学食のパスタの種類ってミートソースとこれしかないんだけどね。出汁と醤油ベースのシンプルな味付けなんだけど、色んなきのこの旨味と玉ねぎの甘さがじんわり沁みて美味しい。あっ、今の何かちょっと食レポみたいだった! ――と、俺が一人で心の中でふざけているうちに、みんなどんどん食べ進めていくよね。 結構混んでるから、早めに食べて席空けたほうがいいもんな。俺もフォークを握り直してパスタを口へ運んだ。 食べ終わったらすぐに席を立って、俺たちは学食を出た。何となくそのまま教室に戻るのは嫌で、4人で中庭へ向かった。 ここはよく、圭典が佐田さんとお昼を食べている場所。 「あー、やっぱ今日は暑いね」 「何か飲みたいかも…」 すぐそこの自販機で紙パックのお茶やジュースを買って、木陰の下のベンチへ。 「夏になったら学食もっと混むよね」 「場所変えたほうがいいかなぁ。でも外は暑いし、教室くらいしか浮かばないよね」 俺はあおと由音の話し声を聞きながら、アセロラジュースのパックにストローを挿した。 「七織、前もそれ飲んでたな」 「うん。これ好き」 あっしくんに言われて頷いたけど、2人と初めて話した日――って言っても月曜日だけど――俺、これ買ってたな。

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