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第46話
顔が熱い。きっと気温が高いせい。
頬の熱がなかなか引かなくて、俺は両手でぱたぱた顔を扇いだ。こんなの全然気休めにしかならないけど。
「からかい過ぎじゃない?」
「からかってんじゃなくて本心だけど?」
「七織は何でも素直だよね。だから一緒にいるの好きだよ」
「そ…う、ですか」
まだ敬語、って3人に笑われた。
俺より、由音とあっしくんの方が素直だと思うな。良いことは割とストレートに伝えてくれるし。
俺は多分、2人のそういうところに何度も助けられている。
「やっぱり日陰でもちょっと暑いね。中入ろっか」
由音にそう言われ、俺たちは中庭から廊下へ。
「七織、これ」
「あ、ありがと」
あっしくんからアセロラジュースを受け取ると、行こう、と言うように肩を優しく押された。俺はそれに抗わず、先を行くあおの背中を追いかけた。
後ろに誰かいるとか、そんなことには全然気づかなかった。
授業が終わって、いつもみたいに帰る準備をしていると、ふと影が差した。見上げてみれば、そこには圭典が立っていた。
一瞬、息が詰まる。
驚きと、痛み。それからやっぱり、ときめき、みたいな。そんなので息が止まった。
「…どうしたの?」
「たまには一緒に帰ろうと思って」
「え」
思いがけない言葉に、手が止まった。
今まで、ずっと一緒で、でもそれはなくなって。やっと慣れようと思っていた。
「佐田さんは? いいの?」
真っ先に出たのはそれだった。でも圭典の返事は素っ気なかった。
「毎日一緒じゃなくてもいいでしょ」
「今までずっとそうだったのに?」
ケンカをしたいわけじゃないのに、俺の口からは可愛くない言葉ばかり出てくる。素直に嬉しいって言えたら良かった。
「…佐川たちは良くて、俺はダメなの?」
その聞き方はずるい。
「…圭典が先に離れたんじゃん。何で俺が怒られるの?」
「別に、怒ってない」
何でか泣きそうだった。前なら素直に喜べたのに。今は、俺の気持ちが圭典の負担になってたんじゃないか、って思ってるから。
「圭典、七織いじめるのやめて」
あおが俺と圭典を遮るように割って入って来た。
「いじめてないだろ」
「顔。不機嫌丸出しだよ。鏡見てから来いよ」
あおはそう言ってから俺を振り返ると、「帰るよ」と言った。
「あ、うん。あの、」
「俺も一緒に行くから」
「は? 何で? 佐田さんは?」
あおにも俺と同じことを聞かれた圭典は、顔をぎゅっとしかめた。
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