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第47話

「たまにはいいだろ」 「その『たまに』が久し振りすぎるから言ってんの。何回声かけたってずっと佐田さんとだったじゃん。なに急に」 何か…あおは若干気持ち悪がってない…? 大丈夫かな…。 「何か企んでる…?」 「俺が2人に何企むって言うんだよ」 「分かんないけど急に変なこと言うから」 「変じゃないだろ」 「変だよ。すごく変。あんなに頑なだったのに気持ち悪…」 「気持ち悪いって言うな!」 「気持ち悪…うわ、七緒帰ろう」 …圭典、完全に不審がられてるな…。 あおがここまで反応するとは…俺の態度が可愛く思えてきた。 「あのぉ…」 控え目な声がして、俺たちはそっちへ視線を向けた。そこにいたのは気まずそうな表情の佐田さん。 「ごめん、あの、私が言ったの。最近全然 日高くんたちといないから、悪いなぁと思って…」 「全然悪くないよ。清々してる」 「あおい」 もしかしたら、佐田さんは俺が言ったことを気にして…? ちょっと淋しい、って俺が言ったから…? そう思って佐田さんを見ると、申し訳無さそうな表情で俺を見ていた。 ――何だ。 すとん、と心が落胆する音がした。 少しだけ、期待してた。圭典が自分の意志で来てくれたのかな、って。 でも、そうじゃなかったんだ。そんな気を遣われるなんて…惨めだ。 「いいよ、別に。圭典が自分の気持ちでそう言うなら別だけど、誰かに言われてそうするんなら…そんなことしなくていいよ」 苦しい。 「佐田さんも、あんまり気にしないで。大丈夫だから」 「あ、牧瀬くん…」 苦しい。ここにいたくない。 「だって圭典、俺といたくないでしょ」 あ。って思った時には、最低な言葉が出ていた。 圭典も佐田さんも、びっくりした表情で俺を見ていて、やってしまったと思った。 でも口から出た言葉は取り消せない。 「避けるんじゃなくて、ちゃんと圭典の言葉で言ってほしかった。そしたら俺だって――ううん、」 言いかけて、それは違うと首を振る。 たらればなんて、意味がないんだ。 「そうじゃないね。すごく傷ついたと思うけど、俺はそうしてほしかった。誰かに頼むとか、俺が気づくの待つとか、そうじゃなくて。ちゃんと――向き合ってほしかったよ」 うん。そうだ。 自分の心が、軽くなるのを感じた。痛いし苦しいし惨めで悔しいけど。でも俺は、大事な気持ちをそのまま捨てられたくなかったんだ。ずっと一緒にいたから、なおさら。 それは、全部俺のワガママだけど。

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