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しゅわしゅわサイダー

良かったかどうかなんて、今は考えても分からない。 分からないけど、俺はやっと本当の意味で、背中を見ていただけの圭典の隣に来れたのかもしれない。 金曜日の朝。俺は、鏡を覗き込んで目が腫れていないのをチェックする。 昨日やっぱり思い出しては泣いてしまって、情けないくらいボロボロで、でもそれだけ真剣に、圭典のことが好きだった。 今度こそ、気持ちに区切りをつけることができたと思うから。 「…よし」 泣いたのは、多分、バレない。はず。 玄関を開けると飛び込んでくる、よく晴れた空の青が目に痛い。でも…うん、何となく清々しい気分。胸はまだ痛むけど…きっと大丈夫。 行ってきます、と声をかけて家を出る。母屋の庭で花を摘んでいるばあちゃんにも手を振って道路に出ると、向こうからあおが歩いて来るのが見えた。 美少年、すんごい大きなあくびしてる。 微笑ましい気分であおを見ていた俺は、その後ろの人影を認めて目を見張った。 「――何で?」 おはよう、とかでなく、第一声はそれだった。 「昨日一緒に帰れなかったから」 あおの後ろから来た人影――圭典は、至極当然な顔をしてそう言った。 「やることなすこと急で迷惑だよね。迷惑って言っていいよ、七織」 あくびを噛み殺しながら、あおは面倒くさそうに言う。 「圭典は自分の都合で振り回しすぎ。ほんとうざい。ワガママ。腹立つ。いっつも勝手なことばっかり。七織の気持ち一回でも考えたことある? ほんとマジでクソ」 「すげぇな…悪口しか出てこない」 「圭典にいいとこなんか1つもないもん。悪いとこしかない。自覚ないの?」 「…それは言い過ぎだろ」 「は? ほんとのことしか言ってないけど。佐田さんと行けばいいじゃん。昨日の今日でよく七織の前に顔出せたよね。厚顔無恥」 おっと。2人の言い合いが始まってしまった。 「誘ってる時には全然相手にしなかったくせにさぁ」 「それはっ、悪かったと…思ってる…」 「思ってるだけでしょ。意味ないよそんなの」 「じゃあ、今度は俺から誘う」 「行かないけどね。佐田さんと行けば?」 「はぁ〜?」 「今までそういうことばっかしてたんだよ、自分が。自覚しろっての!」 あおは苛立たしげに息をつくと、俺の手をがっしり握った。 「行くよ、七織」 「え、あ、」 あおに引きずられるようにして歩き出した俺たちの後ろで、圭典がため息をつく音がした。

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