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第57話
そもそもあおには付き合ってる人がいそう…って俺が勝手に思ってるだけだけど。でも前にあっしくんたちと彼女の話になった時、そういうのは間に合ってるって言ってたし。
本当にそうなら、いつか紹介してくれるかな…。
あおが選ぶ人ってどんな人なんだろうな。
さっき言ってたみたいに、居心地がいい人なんだろうな。
…居心地、かぁ。
今の俺は、由音やあっしくんのそばの居心地がいい。この短期間ですっかり馴染んでしまった。
でも、あおの言う通り、圭典以外に懐く…じゃないけど、他に頼れる相手がいたらいいと思う。気持ちも楽になるし。
俺も、2人に何かできればいいんだけどな。
「…2人はさぁ、何か俺にしてほしいこと、ない?」
昼休み。
唐突にそんなことを聞いた俺に、由音とあっしくんはちょっとびっくりした表情を見せた。
うん、そうだよね。
「どうした? 急に」
「うーん…何か色々、考えてて…」
俺の返事に、あっしくんは「?」って表情になった。
うん、そうだよね。
「七織、そういうのはあんまり人に言わないほうがいいよ…。変なことに巻き込まれたらどうするの?」
由音にはガチめに心配された。
うん、そう……そうなるか?
「七織ってひとりでぐるぐる考えるタイプだからなー。変な結論になったんじゃないの?」
「あおは容赦ないな」
「事実」
まぁでも、ひとりでぐるぐる考えるタイプってのは間違いじゃないかも。なるべく口に出した方がいいのかな、色々。
「何かあったら遠慮しないで話してほしい、くらいかな。俺は」
あっしくんがそう言うと、由音もうんうんと頷いた。
「そういう系?」
「そういう系」
もっとお願い事系を想定してたんだけどな。
「無欲じゃん」
「そうか? ひとりでぐるぐる考えるタイプなら色々話さなそうじゃん。それを話してほしいってんだから、無欲じゃなくね?」
「そうかなぁ…」
それは2人のためって言うより、俺のために近くない? 自意識過剰?
「七織って結構我慢するタイプな気がするんだよねぇ。俺と違って」
由音がそう言って、カラリと笑う。
「我慢できるのすごいけど、我慢しなくていいこともあると思うからさぁ。そういうのは話してくれたら嬉しいかなー」
「我慢、か…」
まぁ圭典のアレは我慢と言えば我慢だったよな。好きな人が別の人と…だったし。本人にぶつけるのは無理でも、誰かに聞いてもらえてたら気持ちはもっと楽だったのかも。
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