58 / 99

第58話

「俺多分、言葉にするのがそんなに上手くないんだろうな。だから自分だけで考えて終わっちゃう」 「よりは大体何でも話してくるから、足して2で割ったらちょうどいいかもな」 「俺、ひとりで考えるの苦手なんだよねー。ドツボにはまっちゃったら、それおかしいよ、っていうのは自分じゃ分かんないし」 「七織はドツボにはまってうんうん苦しむタイプ」 あおにバッサリされた。 でもまぁ…間違ってはないかも…? 「これからはなるべく話すようにするね」 「自分のためにもそれがいいんじゃない?」 あおは素っ気なく言ったけど、ちょっと照れているのを俺は知っている。 ところで今日は学食ではなく、購買に向かっている。購買には学校近くのパン屋さんとかお弁当屋さんが商品をおろしに来てくれている。学食もそんなに広いわけじゃないからそもそも入れないこともあるし。パンが食べたい時はいつも購買。 「グラタンパンあるかな」 「七織、あれ好きだよね」 各々目当てのものを買って、今日は中庭に出る。 昨日ほどじゃないけど、今日もちょっと暑い。じわじわと夏の気配を感じる。 木陰の下のベンチを陣取ってパンにかぶりついていると、あおが小さく「あ。」と声を上げた。 視線を辿ると、圭典と佐田さんがちょうど中庭へと下りてきたところだった。 「日高くんたちも今日ここ?」 「うん。学食混みそうだし」 佐田さんに話しかけられてあおが答える。俺は口の中に入れすぎてしまったパンをひたすら咀嚼しながらそれを聞いていた。決して、喋りたくないから口に詰め込んだとかではありませんから! 「七織、ハムスターみたいになってる。大丈夫?」 由音に心配されてしまった。 「あ。ねぇ、そう言えば圭典くんと牧瀬くんのケンカって結局何が原因だったの? 2人あんまりケンカしなさそうだから…」 「えっ」 声を上げたのは圭典で、俺はやっぱりまだ口を開けなかった。パン入ってて。 「いや、ケンカって言うか…」 言いづらいよね。七緒が俺のこと好きだったんだよね、なんて絶対言えないもん。 「俺が七織に、ちょっと酷いことしちゃって。だからケンカとは違うかな」 「そうなの? 酷いことって…」 佐田さんめっちゃ突っ込んでくるなぁ。彼氏のことだから、気になるのは分かるけど…。そう思いながら、何か言わなきゃと口を開こうとした時。 「ってか別に佐田さんには関係なくない? 圭典と七織のことだし、2人で解決したんだから放っといてあげなよ」 

ともだちにシェアしよう!