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第60話

何かもっと…いわゆる男の理想を詰め込んだ!って感じの穏やかな人だと勝手に思ってた。 「あー…俺も、付き合ってから気づいたんだけど、嫉妬深いっていうか…そういうところはあるかな」 「何それめんどくさ」 切り捨てたあおに、圭典は苦笑いを浮かべる。 「とりあえず追いかけるわ。ごめんな、佐川も幡中も」 そう言って、圭典も中庭を出て行った。 「付き合うって、大変、だね…?」 「相手によるでしょ」 「もしかして、今まで全部佐田さんと行動してたのって…俺のせいもあるかもだけど、佐田さんに言われてたから、っていうのもあるのかな…?」 「今の感じだとなくもないね」 「だとしたら、誤解してて圭典に悪かったなぁ…」 「後で謝っとこ」 あおが素直にそう言った。別れればいいのに、って呟いたのは聞こえなかった振りをした。 別れたら…俺の気持ちがどうにかなりそうで嫌だ。やっと区切りをつけたのに。 「俺、今のでちょっと滝島に同情したなぁ…」 由音がそう言って、焼きそばパンをかじる。ソースのいい匂いがした。 「ご機嫌取りとか大変だよね。好きじゃなきゃできなさそう」 好きじゃなきゃ、か…。好きだから、追いかけたんだよな。…うん。 昨日の、圭典に俺たちと一緒に帰れば?みたいなこと言ったのも、もしかして圭典に断ってほしかったのかな…。結果的には別々で帰ったんだけど。それで圭典が俺のこと気にしてるから面白くなくなって…うぅん…難しい。けど。 「…あんな可愛くても嫉妬するんだなぁ…」 俺はたくさんたくさん嫉妬したけど。佐田さんでも嫉妬することってあるんだな。好きな人の1番でいたい気持ちは分かるけど、俺なんか全然気にする必要ないのに。 「彼女いるとは言え、滝島モテるしな」 「あっしくん…鏡見てきた方がいいよ」 「え?」 あっしくんもモテるの知ってる。樋口さんが言ってたもん。クールで優しいからあっしくんを狙ってる女子がいるって言ってたもん。 人って外から見ただけじゃ何も判らないんだな。佐田さんにも、俺が知らないコンプレックスとかがあるのかもしれないし。俺いままで圭典を避けてたから、本当に佐田さんのこと知らないんだよな。もうちょっと周りの人のこと知らないとダメかな。 思えばいつも自分のことばっかりだった気がする。自分でいっぱいいっぱいだったし。興味は圭典だけだったし。そういう自分から、変わりたい。

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