61 / 99

第61話

お昼を終えて教室に戻ると、バツが悪そうな顔をした佐田さんを連れた圭典が近づいてきた。 「2人とも、今いい?」 「うん」 「いいけど」 俺とあおが頷くと、圭典は――今入ってきたばっかだけど俺たちを廊下へ誘った。 「さっきはごめん」 「圭典が謝ることじゃなくない?」 「あ、うん。まぁ、はい」 圭典がちらっと佐田さんを見る。 「ってか、納得してないなら謝ってもらう必要ないけど」 「違う…。ごめんなさい」 佐田さんは俯いたまま、小さな声でそう言った。 「圭典が休みの日とかも全部佐田さんとになったのって、圭典の意思? それとも佐田さんの希望?」 「それは、どっちも…」 「あっそ」 圭典が俺から離れたかったのは本当で、佐田さんも自分を優先して欲しかった。そういうことかな。 「圭典、七織とのこと話したの?」 「話してない。七織が嫌だって言うことはしたくないし」 「ふぅん? それで佐田さんは納得したの?」 「……」 だんまりかよ。ってあおが言う。 ストレート過ぎて、俺は少しハラハラしていた。 「あの、俺たちも、無理に謝って欲しいとかじゃないし…」 俺が口を開くと、佐田さんがバッと顔を上げた。 「っ無理じゃないって言ってるでしょ…!」 「何でそっちが怒るわけ? 腹立ってんのこっちなんだけど」 そしてあおにガツンとされてまた俯いた。えっと…。 「あんたさぁ、七織だから強く出てんじゃないよな」 「ちょ、あお」 お口が悪くなってるよ! 「人選んで態度変えてんならマジで最悪」 「っ、日高くん…嫌いっ」 「ガキかよ。俺だってあんたみたいな姑息な女嫌いだね」 「えっと、あおも、佐田さんも、ちょっと落ち着こう?」 俺は慌てて2人の間に入った。廊下でケンカはダメだって。本当に。 「あの、俺と圭典は小学校の頃からの友達で、それだけ。付き合いだけは長いから、俺と圭典にしか分からないこともあるかもだけど…」 「何それ、自慢?」 「えーっと、そうじゃなくて…。あの、俺、嫉妬することはあっても嫉妬されることはなかったから、ちょっとびっくりしてると言うか…。だって俺だよ?」 俺だよ、とは? ――と、その場の3人の表情が語っていた。言葉のミスチョイス。 「佐田さんって、俺勝手に、何でも持ってる人だと思ってたから…。ずっと嫉妬される側の人だと思ってた」 「そんなわけ…」 「コンプレックスとか、全然ないと思ってた」 「あるよ! すごくある! 今だって…」

ともだちにシェアしよう!