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第63話
圭典…あおは多分遊んでるだけだと思うよ…。
「…私、今度こそ『いい彼女』になりたかった。だからいつも、みんなの前では余裕のある振りしてた。けど、本当は全然余裕なんてないよ…。男の子とか関係なく色んなことが気になって、嫉妬して…。牧瀬くんが圭典くんのこと好きなんじゃないかとか、色々…勝手に考えたりして…。ごめんなさい…」
俺は今、いや、俺だけじゃなく佐田さんを除く全員がドキッとした。と、思う。侮れないな…彼女の直感。
「牧瀬くんが圭典くんのこと好きだったら…私絶対敵わないじゃない…」
「え? え? は? え、何て?」
衝撃的過ぎて、俺の口からは疑問符しか出てこなかった。それは有り得なくない?
「俺は佐田さんの足元にも及びませんが? ってか、男」
「男の子が男の子のこと好きになっちゃいけないなんて決まりないでしょ? 牧瀬くん、癒やし系だし…可愛いって言ってる女子いるもん…」
「…複雑…」
女子に可愛いと言われていたとは…。
でも…そっかぁ。完璧だと思ってた美少女にもコンプレックスってあるんだな。そういうところは、俺と変わらないんだな…。
「…本当にごめんなさい。言いたくないって言ってたのにしつこくして…」
「うん。言えないから、秘密にさせて」
「…すごく気になるけど、我慢、する」
ひとまず、オッケー? で、いいのかな?
「牧瀬くんみたいに、秘密が魅力って思えたらいいのに…」
「そこは感性の違い、かなぁ」
結局圭典は、それでも佐田さんの隣にいるのを選んできたわけだから。そこも感性の違い、だろうな。
「でも圭典はさ、そういう佐田さんを受け入れて一緒にいるんだよね。俺が言うのも変だけど、圭典のこと大事にしてあげて、ね」
「……今のもすごい嫉妬。けど、離れていかない人は初めてだから、大事にしたい」
「圭典、こんなのがいいとか趣味悪いね」
「日高くんはやっぱり嫌いっ」
「奇遇だね、俺も」
えっと…。水と油、かな…。
2度も振られたのにはちょっと腹が立つけど、こうして話ができたのはよかった、よね…?
「あーぁ…私、佐川くんたちにも睨まれちゃったなぁ…」
「態度最悪だったもんね。仕方ないよ」
「…日高くん、本当に私のこと嫌いでしょ」
「今回のことで7割嫌いになった」
「…3割は?」
「嫌いかな」
「全部嫌いなんじゃん!」
「七織は特別優しいやつだからこれで済んでるってこと、忘れんなよ」
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