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快晴アップルサイダー

完璧に見える人でも完璧じゃなくて、誰にも分からないコンプレックスがある。それと、自分は自分で思ってるほど、何もないわけじゃない。 そんなことが分かった金曜日。 の、翌日。 スマホのアラームを止めて、布団の中で伸びをする。 由音にモーニングコールしないと。 ベッドから下りると、俺はそのままスマホを操作して由音に電話をかけた。呼び出し音が聞こえて、1回…2回…。起きないかな。 朝苦手そうだったもんな…。昨日準備した着替えを手に取りながら再トライ。 『…ん゙ぁー…』 唸り声。 「おはよう、由音」 『うぅぅん…おはよぉ…』 「起きて」 『んー…起きぅ』 スマホ越しに、ゴソゴソする音が聞こえる。 「集合7時半だからね」 『うん、頑張る…。起こしてくれてありがとね』 ミッションクリア。じゃあ、また後でね。って電話を切る。 7時過ぎの電車に乗るから50分には出ないとな。ぱぱっと着替えて顔を洗うと、俺はそのままダイニングへ。寝癖なくてよかった。 母さんが作ってくれた朝ごはんをのんびり食べていたら、時計はもう6時半。食器洗ってトイレ行って…急がなきゃ。 「七織、もう出かけるのか?」 「まだだけど、50分には出ないと」 慌てて食器を洗い始める俺に、のんびりお茶を飲んでいた父さんが声をかけてきた。 「駅まで送るか?」 「うーん、でも近いしあおも一緒だから歩いてくよ。ありがとう」 「あ、帰りに卵と納豆買ってきてね」 「はーい」 母さんに返事をしながら頭にメモ。スーパー寄るの忘れないようにしないと。食器洗い終わったらスマホにメモしよ。 トイレ行って歯磨きしてバタバタ動き回って何とか時間に間に合った。 「行ってきます!」 慌ただしいんだから、と呆れたような母さんの声を背中に家を出ると、あおはもう既に家の前で待っていた。薄いピンク色のTシャツを着た俺を見たあおは、ぱっと明るい表情を浮かべた。 「似合うじゃん! あ、おはよ」 「おはよ。ありがとう」 色々悩んだけど、下は無難にデニムパンツにした。色々冒険してみなくても、薄いとは言えピンク色のTシャツを着ることが俺にとってはそもそも冒険だもん。 「佐川結構センスいいよね。七織にこの色選ぶとか」 「それは本人に言ってあげてね。初めて着る色だから、何かワクワクと言うか…」 「いいじゃん。気持ちも明るくなるね」 確かに。

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