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第68話

マルチコートでは、バドミントンを楽しんだ。それはもう全力で。 同じようにグループで遊びに来ていた他校生から「あいつらやばくね?」「ガチじゃん」って引かれるほど全力だった。 「…っ、ちょっと…もう、ムリ…」 みんな強すぎるって。スマッシュガンガン打ち込んでくるのやめて。 「ちょっと、休もっか」 1番元気な由音も息切れしてる。 「日高くん、強いねー」 「明日筋肉痛んなりそう…最悪…」 「七織、生きてるか?」 「い、いきて、る」 息切れやばいけど。 「ちょっと混んできたな。休憩したいし、移動するか」 「賛成。疲れた…」 足腰弱ったおじいちゃんみたいにヨロヨロ立ち上がった俺を見たあおがちょっと笑う。 「ヨボヨボじゃん」 「みんなのせいでしょ…」 俺、別に運動得意じゃないからね? 人並みだからね? ヨボヨボおじいちゃんは、両側を由音とあっしくんに支えられて移動した。 フードコートのベンチで休んでいると、3人で飲み物を買いに行ったはずのあおが戻ってきた。自分の分だけ飲み物持って。 「2人は?」 俺が聞くと、あおはちょっと真剣な表情で俺を見た。 「すごいんだよ」 「何が?」 「逆ナンが止まらない」 「まぁ!」 言われてみれば、スタイルいいしカッコいいし、中身もカッコいいし、そりゃ声かけられないわけがない。 「青女の子にも声かけられてた」 「まぁ!!」 青女――近くにある青蘭女学館っていう女子校で、近隣の男子中高生の間では割と高嶺の花的な所だ。女の子のレベルが高いって噂になってるのは知ってる。 「…カッコいいもんね、2人とも」 いつか、彼女ができたら――こんな風に遊ぶのもなくなる? でも、男だけで遊びたいって言ってたし…。 ――圭典みたいに、変わったりしちゃう…? それは、嫌だな。 心が正直に呟いた。 淋しい。圭典が離れた時だって淋しかったけど――もっと、淋しい。気が、した。 俺ってこんなに欲張りだったんだ。 「あっ、ちょっと日高くん! 置いてくなんてひどくない?」 「しかもちゃっかり自分の分だけ持ってるし」 顔を上げれば、不満げな由音と呆れ顔のあっしくんがこっちに来るところだった。 「だって入れ食い状態だったし」 「一緒に断ってくれたら良かったじゃん!」 「そんな野暮な真似できないよ」 「顔が笑ってんだけど?」 「野暮って…今日一緒に来てんだから野暮じゃないだろ」

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