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第75話
「大事だったから、離れるのも失くしたの認めるのもつらいと思うけど…ちゃんと、味方はいるし。それに、七織のこと、もっと大事にしてくれる人が案外近くにいると思うなぁ」
「え、」
それ、さっきもあっしくんから似たようなこと言われた。2人は何を知ってるの…?
「お待たせー」
あおの声が聞こえてハッとそっちを見ると、あおとあっしくんが袋片手にこっちへ歩いて来ていた。
「あ、おかえり…」
「あっくんありがとう!」
由音が俺の隣から立ち上がってあっしくんの方へ。
「中身確認してくれ。あってる?」
「えっと……あってる! ありがとうー! お金払うからレシートちょうだい」
由音とあっしくんのやり取りを横目に、あおが俺の前に来て紙袋を差し出した。
「これ、七織のね」
「え。」
「カナイパンのクリームパン、好きだったでしょ? 売ってたよ」
「好き! ありがとう! ほしかったけど、人すごかったから…。あ、お金払うね」
「別にいいのに」
「だめだよ」
何か…あっしくんと由音に言われたことが…離れない。
俺のことを、大事にしてくれる人、って…?
今も充分、あおにも、2人にも、良くしてもらってるけどな。
それに…俺はちょっと今――いや、前もそうだったけど――自分に自信がない。あんなに一緒にいたのに…もちろん性別だって関係あるんだろうけど、なくなってしまったから。
「七織、どうかした?」
急に黙った俺を不審に思ったんだろう。あおが顔を覗き込んできた。
「ううん。大丈夫」
こんな不確かな何かを、あおに話すわけにはいかないよね。
「あ、そろそろマジックショーの方行こうか」
由音の声で、俺たちは会場になっているモールの広場へ向かった。
マジックショーの会場は既に人がたくさんいたけど、まだ早いのもあってか座ることが出来た。4人一緒ってわけにはいかなかったので、あおと並んで座る。
「七織さぁ、何かあったでしょ」
この人エスパーか。
「分かりやすい」
違う。ヒント出してたの俺だ。
「……そんなに?」
「うん」
即答。
「……あっしくんと由音が、同じような意味深なこと言うから」
「ふぅん?」
え、何その反応。それが?みたいな反応。
「…あお、何か知ってるの?」
「うーん…」
え、何その反応。
あおは俺の顔を見た。もう随分見慣れた顔だと思うのに、じっっくり見た。
美少年に見つめられるとドキドキするからやめて。
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