75 / 99

第75話

「大事だったから、離れるのも失くしたの認めるのもつらいと思うけど…ちゃんと、味方はいるし。それに、七織のこと、もっと大事にしてくれる人が案外近くにいると思うなぁ」 「え、」 それ、さっきもあっしくんから似たようなこと言われた。2人は何を知ってるの…? 「お待たせー」 あおの声が聞こえてハッとそっちを見ると、あおとあっしくんが袋片手にこっちへ歩いて来ていた。 「あ、おかえり…」 「あっくんありがとう!」 由音が俺の隣から立ち上がってあっしくんの方へ。 「中身確認してくれ。あってる?」 「えっと……あってる! ありがとうー! お金払うからレシートちょうだい」 由音とあっしくんのやり取りを横目に、あおが俺の前に来て紙袋を差し出した。 「これ、七織のね」 「え。」 「カナイパンのクリームパン、好きだったでしょ? 売ってたよ」 「好き! ありがとう! ほしかったけど、人すごかったから…。あ、お金払うね」 「別にいいのに」 「だめだよ」 何か…あっしくんと由音に言われたことが…離れない。 俺のことを、大事にしてくれる人、って…? 今も充分、あおにも、2人にも、良くしてもらってるけどな。 それに…俺はちょっと今――いや、前もそうだったけど――自分に自信がない。あんなに一緒にいたのに…もちろん性別だって関係あるんだろうけど、なくなってしまったから。 「七織、どうかした?」 急に黙った俺を不審に思ったんだろう。あおが顔を覗き込んできた。 「ううん。大丈夫」 こんな不確かな何かを、あおに話すわけにはいかないよね。 「あ、そろそろマジックショーの方行こうか」 由音の声で、俺たちは会場になっているモールの広場へ向かった。 マジックショーの会場は既に人がたくさんいたけど、まだ早いのもあってか座ることが出来た。4人一緒ってわけにはいかなかったので、あおと並んで座る。 「七織さぁ、何かあったでしょ」 この人エスパーか。 「分かりやすい」 違う。ヒント出してたの俺だ。 「……そんなに?」 「うん」 即答。 「……あっしくんと由音が、同じような意味深なこと言うから」 「ふぅん?」 え、何その反応。それが?みたいな反応。 「…あお、何か知ってるの?」 「うーん…」 え、何その反応。 あおは俺の顔を見た。もう随分見慣れた顔だと思うのに、じっっくり見た。 美少年に見つめられるとドキドキするからやめて。

ともだちにシェアしよう!