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第76話

「知ってるけど、教えない」 あおい様…。 あおは俺の隣でマジックショーを楽しんでいたけど、俺は…あんまり楽しめなかった…。 マジックショーが終わって、由音とあっしくんとは、駅で別れた。俺はあおと同じ電車に乗って、程よい疲労感に包まれながら、車窓から流れていく景色をぼんやりと見ていた。 「あれ。」 気がつけば、目の前に誰かが立っていて…俺たちを見下ろしていた。 「七織とあおいじゃん」 誰かって…圭典じゃん。 「2人とも、何か疲れてる?」 「今日運動してきたからね。朝からスポッチョで」 「えっっ、珍し!」 「電車でデカい声出すな」 「それくらいびっくりしたんだって。スポッチョで? 2人が? ほんとに??」 …圭典。そんな意外そうにするとか…ちょっと俺たちに失礼。いや、分かるけど。分かるけどさ。 「ホントだよ」 あおがうるさそうに顔をしかめた。 「へぇー。誰と? 絶対2人は選ばなそうだもん。誰かと一緒でしょ」 「ムカつくくらい失礼だな。佐川と幡中。4人で行ってきたの」 面倒くさそうに答えたあおに、圭典は目を見開いた。 「知り合って1週間で? 普通行く?」 「うっさいな。普通なんて知らないよ。楽しきゃ行くでしょ」 「いやでも、1週間だぞ?」 「だから何」 「展開早くない…?」 「展開って何の? うざいんだけど、さっきから」 「2人が女子ならすごい心配…」 「女子じゃないし。それに佐川たち圭典よりモテるし、別に全然心配じゃない」 「あおい、うっさい」 「自分で言い出したんだろ。そっちが黙れ」 電車でケンカはやめようね。 「ってかさぁ、圭典が全部断ったからじゃん。だから他の人と遊びに行ったの。何の文句あるわけ?」 「…ありません」 「だったら黙って」 …ぐうの音も出ない、ってこういうことを言うのかな…? 圭典がぐうの音も出なくなってる。 「…楽しかった?」 矛先がこっち向いた。 俺は素直に頷いた。 「楽しかったよ。ダーツ初めてやった」 「ふーん…」 「あと、バドミントンして、アーチェリーも初めてやった。フリスビーもしたし」 「…ふーん」 って言うか何その反応。圭典、ふーんしか言ってないんだけど…。 「嫉妬するくらいなら最初から離れなきゃ良かったのに。バッカみたい」 あおの一言で、圭典は渋面になった。 嫉妬、か。 俺の嫉妬と圭典の嫉妬は違うからな。

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