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第77話

「圭典は佐田さんとどこ行ってきたの?」 「プラネタリウム」 「プラネタリウムか…」 最近行ってないな…。久し振りに行きたいかも。誰か誘って…―― 「あれ?」 「何? どうしたの? 七織」 急に声を上げた俺を、あおが不思議そうに見ている。 俺は――『誰か』の時に思い浮かんだ相手に、自分で自分にびっくりしていた。 これはきっと、意味深なこと言われたから……だよね…? 「ううん。何でもない」 慌ててあおに首を振ってみせたけど、俺の心臓はドキドキしていた。何で急に―― 「佐川たちとは、まだ遊ぶの?」 「え。約束はしてないけど…でも、多分遊ぶよ」 「…俺との約束が先だからな」 「え。」 「自分は今まで放ったらかしに…」 「分かった。今までのことは全部俺が悪かったから」 あおを遮って圭典が言う。 「って言うかさー、佐田さんもあんまりいい顔しなさそう」 「いや、それは…」 言い淀む圭典。そんなことないよ。って言い切れないんだね…。でも1回くらいなら大丈夫じゃないかな。どうかな。 「まぁいいけど。でもさぁ、圭典。俺がいないときに七織誘うのは禁止」 「何で」 「余計なこと言って傷つけそうだもん。だからダメ」 「もうそんなことしない」 「信用できない」 あおにピシャッと断られ、圭典は渋い顔をした。でも何も言わなかった。遊ぶ時はあおも一緒に、って言ったもんな。 そうこうしているうちに電車は駅に着き、俺たちは揃って降りた。 ここからはみんな同じ道を帰る。 「お腹すいた」 「今日いっぱい動いたもんね」 夕ご飯何かな。その前に何かおやつ食べよう。 前に戻ったみたいに、俺たちは色んな話をしながら帰り道を歩いた。小学生の頃を思い出してくすぐったくて、懐かしくなって――少しだけ、切なくて。鼻の奥が、ちょっとだけ痛かった。 その日の夜は、程よい疲労感のおかげかぐっすり眠れた。 夢の中で俺は、誰かと手を繋いで――黄色い海のような広い広いひまわり畑を歩いていた。その人が俺に何かを言うたびに、俺は嬉しそうに笑う。そんな俺を見て、その人も笑う――顔は見えないけど――気配がした。 温かくて優しくて、泣きそうなほど愛おしい、幸せな夢だった。

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