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第81話

胸が苦しい。 だけどこれは、圭典を想ってたのとは違う。全然違う。 「ほんとはね、あっくんと仲いいのも、ちょっと妬いてた」 「えっっ」 「あっくんには笑われたけどね」 由音が照れたように笑う。その笑顔は、いつもみたいな華やかな感じとは違って、何だか…少し、可愛く見えて…胸が、きゅぅっと変な音を立てた。 「俺、結構狭量なんだな、って…七織を好きになって気づいた」 「お、お、俺、あの」 「大丈夫。だって知り合ってまだ1週間だし、返事ほしいって言われたって困るのも分かってる」 「こ、困るって言うか…初めてで…」 「そうなの?」 「そうだよ! 俺、だって…振られたばっかりで…」 「ね。滝島も勿体無いことするよね。七織に好きって言われたら、俺はすごく嬉しい」 「…っ」 顔が熱い。由音の顔見れない…。あと心臓がうるさい。全身の血が沸騰してるんじゃないか、ってくらい、熱くて…鼓動が大きくて。 俺、どうにかなりそう…。 「困らせたいわけじゃないんだけど、ごめんね。困って俺のことだけ考えてればいいとか、ちょっと思ってる」 「ま、待って、待って」 もうキャパオーバー。 「七織が滝島のこと気にしないように一生懸命忘れようとしてるの見てて、そういう…健気って言うか、不器用なところが可愛いと思ってた。段々慣れて笑ったり名前呼んだりしてくれて、俺はすごく嬉しかったよ。このまま滝島のところに戻んなきゃいいのになー、って、本気で思ってた。でも七織はさ、前に進むために自分でちゃんと終わりにしたんだよね?」 「…うん」 「そういうところがね、可愛いだけじゃなくてカッコいいって思った。七織は自分にいいところがないって言うけど、いいところはいっぱいあるよ。素直で可愛いし、強くてカッコいい。運動下手なのも可愛い」 「ちょっと!?」 「笑った顔が可愛い。でも怒った顔も可愛い。初めて知った」 俺の口から出たのは、情けない「ひん…」という小さな悲鳴だけだった。 そんなの誰にも言われたことない。由音しかそんなこと言わない。――言ってくれない。 「七織が好き。俺多分、加減できないと思うから、最初に謝っとくね。ごめん」 「か、加減、加減とは?」 「うーん、好意を伝える加減? 滝島の前でも多分、ハグするし、好きって言うと思う。多分ってか、うん、絶対」 「宣言!?」 「好きだよ、七織」 「いっ、今はやめて! 身がもたない!」 もう心臓が限界だよ!!

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