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第82話
「でも本当に無理なら言って。七織が嫌がることはしたくないし」
「む、無理って言うか、わ、分かんない…」
「うん。1週間じゃ知らないことの方が多いしね。急に好きって言われても、混乱するだろうし」
混乱…。
「…あの、あのね、俺…しんどい時、由音が笑ってくれるの、好きだったよ。華やかで、気持ちも、明るくなるから。だから、あの…無理じゃ、ないと思うけど…同じ好きになれるかどうか、分かんない…」
「すごい期待したいけど…まだ我慢しとくね」
「…もうちょっと、時間もらっても…いい?」
「もちろん。俺のこといっぱい考えて」
そんなきれいな笑顔で言われたら、本当に頭から離れなくなりそうで…困る。
「もう由音のことで頭いっぱい…」
「可愛い」
蕩けそうな表情で微笑むから、俺の頭も蕩けそう。
心臓がものすごい勢いで爆走している感じがする。大丈夫かな。疲れて止まっちゃわないかな。
「あの、ありがとう…。好きって、言ってくれて、嬉しかった」
「うん。俺も、来てくれてありがとう」
「あ、あの、明日からも、なるべくいつも通りに、する」
「俺は遠慮なく好きって言うね」
いい笑顔で…!
「ドキドキして困るから…1日2回までにして」
「それだと足りない」
「たっ、足り、足りさせてくださいっ」
足りないなんて…そんなの、困る。
「あんまり困らせて日高くんから接近禁止令出されても困るし…なるべく自重するけど……できなかったらごめんね」
「自重する気はあるの?」
「うーん…これくらい」
指で示された隙間は、極わずか。1cmくらい?
少なっ。
「七織は今まで気持ちをあげるばっかりだったから、貰うのには慣れてないのかもね」
「貰う…」
俺の気持ちは一方通行だったからな。
「これから俺が毎日あげるから、慣れてね」
「っ、」
慣れるかな…、これ。
由音の笑顔がすごいキラキラして見えて、慣れられる気がしない。毎日毎日、ドキドキして終わりそうだ…。
そもそも、恋愛の経験値すごい低いし。でもこれは、俺が、俺自身がちゃんと考えて答えを出さないといけない。
「あおに相談とか、してもいい…?」
「いいよ。日高くんも知ってるし」
「うん。…あっしくんは?」
「ちょっと妬ける、けどいいよ。あっくんのこと信頼してるし」
「分かった。あの、ほんとに真剣に考える、ね」
由音を見上げる俺の顔は熱い。そんな俺の頬に触れて、由音は小さく笑った。
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