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第84話
恋愛感情うんぬんは置いといて、俺は由音が好きだ。人として、好きだと思う。
「俺、多分、また失くすのが怖いんだと思う。圭典と由音は違うのは分かってるんだけど…」
「気持ちは分からないでもないけど。でもさぁ、佐川だって同じだったとは思わない?」
俺は思わずあおを見た。
「せっかく仲良くなったのに、七織に避けられる可能性だってあったでしょ。気まずくなることだって考えたと思うよ。伝えることから逃げられたはずじゃん。でもそうしなかった。それは何で?」
「…っ」
「それは七織が自分で考えなきゃ」
「…うん」
そうだ。その通り。
俺は圭典に伝えることから逃げたけど、由音はそうじゃない。それは多分、何も伝えないでいるよりも、伝える方がいいと思ったからだよね。由音は隠しておくのが苦手って言ってたけど、それだけじゃなくて、俺にも知ってほしかったんだと思う。
――俺が、圭典とのことで傷ついて卑屈になってたのを、由音は知ってたから。
いいところはたくさんある、って言ってくれた。俺に自信をつけようと、してくれたんだよな。きっと。
そういう優しさに、応えたいと思う。想ってくれてる気持ちに、恥ずかしくないように。
「…俺もうちょっと、由音のこと知りたい」
「うん。いいと思うよ」
パリパリと小気味いい音を立てて、ポテチがあおの口の中へ消えていく。俺はそれを見ながら、あっしくんに連絡してみようかな…と思っていた。
由音はあっしくんに相談してたって言ってたし。ちょっと嫉妬するけど、相談していいよって言ってたし…。
文字だと上手く説明できない感じがしたので、俺はとりあえずあっしくんに『電話しても大丈夫な時間あったら教えて』とメッセージを送った。
そうしてあおと一緒にポテチを食べていると、俺のスマホが鳴った。あっしくんだ。
「スピーカーにして」
あおがそう言うので、スピーカーホンにして出る。
「もしもし」
『あ、七織? 今電話いいか?』
「うん。俺からかけようと思ってたけど…ありがとう」
『いいって。よりのこと?』
「ぇあ!? あぅ、その、そう、」
「何いまの声」
『日高くん一緒?』
「うん。そう、一緒〜。今俺ん家。ってか幡中、前はこっち住んでたんだよね? 時間あるなら来てよ」
あおの無茶振りに、あっしくんが笑う。
『俺は行ってもいいけど、よりのこと考えたらやめとくな。自分の知らない所で、日高くんも一緒とは言え、好きな相手と俺が会ってたら嫌だと思うし』
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