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第88話
翌日。月曜日。
あおと学校へ行くと、由音もあっしくんも既に登校していた。
うぅうん…何かドキドキする…。
「お、おはよぉ」
ドキドキがそのまま態度と声に出てしまった俺に、由音もあっしくんもちょっと笑った。
だって慣れてないんだ、こういうの。
「おはよ、七織」
「おはよう。ガチガチだな」
「だって…何か意識しちゃって…」
「俺思うんだけど、佐川がもっとぐいぐい行けば落ちるんじゃないかな」
「日高くんが言うならそうなんだろうな…。ちょっと圧強めで行ってもいい?」
「だめっ」
心臓もたないから!
「ダメって言われた〜」
「あんまりガツガツ行くと嫌われるぞ」
「まぁそーだよねぇ。のんびり行こうね、七織」
「うん…」
由音が俺に笑顔を向ける。華やかで気持ちも明るくなるような笑顔。
…うん。この笑顔は、好き。好きだ。
まだドキドキしてる。俺、大丈夫かな? 由音と2人になったら爆発しちゃわないかな?
「俺は意識してくれてるだけで割と今は満足かなぁ」
「佐川、そんなんで満足していいの?」
「『今は』ね」
「ふーん?」
あおがちらっと俺を見る。
「ま、頑張れば? 七織もね」
「えっ」
「ありがとう、日高くん」
何か…何か由音、余裕だな。ちょっと悔しい…。
俺はこういうの初めてだから、顔見れば変に意識しちゃうし。
思わず縋るようにあっしくんを見る。
あっしくんは苦笑いで、俺の背中を励ますように優しく叩いた。
「より多分、吹っ切れたんだろうな」
「吹っ切れた?」
「嫌われるかも知れないとか、振られるかも知れないとか、そういうの。昨日、よりに電話しただろ?」
「あ、うん」
そか。あっしくんは知ってるんだ。由音が話したんだろうな。
「自分のこともっと知りたい、って言ってくれたのが嬉しかったんだってさ。それまでは、突発的な出来事に弱いから断れなかっただけかも、ってちょっとヘタレてて」
「ちょっとあっくん、その話は禁止」
「振られるとかそういうこと考える前に、自分に出来ることは全部やって気持ちも惜しみなく伝えて、後悔しないように。ってことなんじゃねぇのかな」
あっしくんは由音をスルーして、そう言って笑った。
「だから七織も安心してぶつかっていいと思うぞ」
俺はちょっと声が出なかった。
あっしくんを見上げていた顔をそのまま由音の方に向ける。俺と目が合った由音は徐ろに両腕を広げた。
そしてそのまま――
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