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第91話
それからは、あおもあっしくんも気を遣ってくれて、由音と2人でいる時間がすごく増えた。
週に2回とかは4人でお昼を食べたりするけど、ほとんど由音と一緒で、帰りも2人になることが多くなった。
由音と一緒にいる時間は、心地よくて穏やかで、温かい。
でも由音が作ってくれる時間に甘えてるだけは嫌だから、俺もなるべく自分の気持ちを口にするようにした。伝えたいことを伝えられないまま一緒の時間が終わっていくのは嫌だ。
意見が違う時もあるけど、そういう時、由音は俺の話をちゃんと聞いてくれたし理解しようとしてくれた。だから俺も安心して伝えることができたし、同じことを由音にも返したいと思って行動するようにしている。上手くできてるかは…聞いてみないと分かんないけど。
でも、由音が俺のことをすごく大事にしてくれているのは、よく分かる。
分かるから…『好きかも?』から、『うん。好きだな』になるよね。
だから今度は、俺が由音に気持ちを伝えたい。
「ねー、七織。今度ここ一緒に行かない?」
「あ、うん。行きたい」
伝えたいんだけど…タイミングがな…。
いつどこで言うのが正解?
由音が見せてきたスマホの画面を覗き込みながら、俺はせっせと頭を働かせていた。
そんなに構えなくていいと思うんだけど、適当な所では伝えづらいと言うか。やっぱり2人でいる時に伝えたいんだけど。
「たまにはあっくんや日高くんも誘おっか?」
「あ、え…と」
由音に他意がないのは分かってる。あおのこともあっしくんのことも大事だし、一緒にいて楽しいし、すごく大好きだけど。
「あの、由音は俺と2人じゃ、やだ…?」
「全然。最高」
「じゃあ、2人で行きたい」
「承知!」
返事が全部単語なんだけど…大丈夫かな?
とにかく俺は、次に一緒に出かけた時に由音に気持ちを伝えよう! と、決めた。
「…くそかわ…」
スマホ画面見つめたまま由音が何か言ってる。可愛いやつ映ってたかな?
あおとあっしくんに相談すると、2人とも笑顔で励ましてくれた。そんな優しい2人に背中を押されて、気合も十分に迎えた約束の日。
俺たちの目的地は、プラネタリウム。
初めて4人で遊んだ日の帰りに、圭典が佐田さんと一緒に行ってきたと言っていたプラネタリウム。
あの時俺はまだ由音のことを好きになってなかったけど、『誰か誘って行こう』って思った時に浮かんだ『誰か』は由音だった。
何か、不思議。
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