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第92話
感慨深いものがあるなぁ、なんて1人で思っていると、スマホが鳴った。由音からだ。
「どしたの?」
『ごめん! ほんとにごめん! 電車乗り遅れた!』
めっちゃ息切れてるから、めっちゃ走ってくれたんだろうな。
「全然いいよ〜。プラネタリウムも時間に余裕持って行こうって話してたじゃん。次の電車でも余裕だし大丈夫」
『ありがとう…! いやでも本当ごめん!』
「大丈夫、慌てないで来てよ。のんびり待ってるし」
『ありがとう、七織。優しい。好き』
「どっ、どういたしましてッ」
動揺してしまった。
今日は俺からちゃんと『好き』って言おうと思ってるのに。
向こうで由音がちょっと笑って、『そういうところも可愛くて好き』と追い打ちをかけてきた。ずるいぞ。
「…やっぱり急いで来て」
『早く俺に会いたくなった〜?』
からかってやがる…。
これで『うん』って言ったらどんな反応するのかな。でもそれはずるいよな。
「ちょっとお腹すいた」
『はーい』
「…あと、」
『あと?』
「…顔見たら、話す」
『?? はーい』
「あの、由音さぁ」
『うん?』
由音の後ろで、電車のアナウンスが聞こえる。
「俺のこと、その、まだ…好きでいてくれてる?」
『もちろん。伝わってない?』
「ううん。伝わってる。ありがとう」
伝わってる。すごく。
だから俺も、同じ気持ちを返したいし、伝えたい。
『どしたの? 急に』
「由音はいい男だな、と思って」
『え、待って。何? 照れる』
あ、やばい。電車来た。
って声が聞こえて、俺は思わず笑ってしまった。やばくないじゃん、それ。
『電車乗らなきゃだから一旦切るけど』
「うん。待ってるね」
『さっきのもっかい言って』
「由音はいい男だね…?」
『ありがと! じゃあ後で!』
返事する前に切られた。
あれで合ってたのかな?
よく分かんないけど、まぁいっか。多分10分くらいで来るだろうからと駅前のコンビニでおやつを調達。その後隣の本屋をふらふらしていると、着いたよ!と由音から連絡が。同じホームから出る次の準急に乗るため、俺は改札を抜けてホームへの階段を上がった。
「おはよう、七織。待たせてごめん」
「おはよ。平気だよ。お菓子買ったけど、由音も食べる?」
「あ、ありがとー。って、そうじゃなくてさぁ」
「?」
「デートに遅刻してんだから怒ってもいいと思うよ、俺は」
「うん。でも謝ってくれたし、時間余裕あるし」
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