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第95話

やばい。顔熱い。 「今日ね、絶対伝えようと思って」 「そう、だったんだ…」 「うん」 お互いソワソワしてしまって手の中でハンバーガーを弄んでしまう。食べ物で遊んじゃいけません! 「とっ、とりあえず、食べよっか」 「あ、うんっ」 ソワソワしたまま、ハンバーガーを口へ運ぶ。 何か…味よく分かんなくなってる。 「あの…」 先に食べ終えた由音が、視線を地面に向けたまま口を開いた。目元がじんわり赤いのは、きっと俺も一緒。 「ありがとう。…めちゃくちゃ嬉しい」 「…ん」 照れてしまって、言葉が出ない。 「滝島のこと結構長く好きだったっぽいから、長期戦覚悟してたって言うか、そんな感じだったから」 「あー…」 圭典、かぁ。 「今思うと、好きって言うか…いや、好きではあったけど、ちょっと違ったのかも」 「違う?」 「上手く言えないんだけど、圭典のこと考えたら苦しくて、でも由音のこと考えると…なんて言うの? 温かい、みたいな。幸せな、気持ちになる」 「やばい…胸がやばい…!」 「由音が俺のこと好きっていう安心感はもちろん大きかったと思うけど。それがあるから、この人のことは安心して好きになれるっていうかさ。好きになっても大丈夫、って思えたから」 「うわ…ちょっと待って、泣きそう…」 「圭典へのはさ、好きだけじゃなかったんだろうな」 最後の一口を放り込んで咀嚼する。その間、由音は黙って俺を見ていた。 「絶対言えないって思ってたし、隠さないといけないって思ってた。…バレてたけど。好きになったらいけない、って思ってたのかも。だからずっと苦しかったんだと思う。好きになるのは止められないし、だけど報われないし、なのにバレたくない。もうぐちゃぐちゃで、何で圭典なのか自分でも分かんなくなってた」 「…でも、」 由音が俺の髪にそっと触れた。 「ぐちゃぐちゃになるほど心の中にはずっと滝島がいたんだよね。俺はそれが…羨ましくて、少しだけ、妬ましい」 「由音…」 「ごめん。嘘ついた。少しだけじゃなくて、とてもたくさん自分でも引くほど妬ましい」 俺は由音のこういう潔いところも好きだと思う。 「俺、そんなに…誰かから好きでいてもらったことなくて、だから由音が真っ直ぐ好きだって言ってくれるの、すごく嬉しい。だから、なるべく、俺も同じだけ返したくて…これから頑張るから、それでもいい…?」

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