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圭典くんのひとりごと
自慢じゃないけど、小さい頃から割とモテた方だからか。あぁ、この子俺のこと好きだな。っていうのが、何となく分かった。例えばそれが友達の好きな子だったらちょっと困るから、それとなく距離を置いてみたり、多分そこそこ上手にやってきたと思う。
今までは。
七織の視線に気づいたのは、中学生の時。
でもその時は、恋愛感情を含むものだと思っていなかった。七織とは小学生の頃から一緒で、家も近所で、あおいと3人で学校行ったり遊んだりすることが多かった。だからその延長と言うか、友愛なんだと思っていた。
でも、あおいを見る目とは何だか違うように感じて、その時思ったのは『まずいなぁ』だった。
だって七織とは友人で、それ以上を求めてはいなかったから。と言うか、それ以上になりたいっていう気持ちは、俺の中にはなかった。七織とは、『幼馴染み』で『友人』のままで、いたかった。
だけど、今までの子と同じように、俺から離れることもできなかった。
七織は大人しくて穏やかで、隣は居心地がいい。
でもそんな俺のずるい気持ちは、あおいにはバレバレだったんだろうな。
高校に入ってすぐ、マナミ――彼女に告白されて、いい機会だと思った。
俺が彼女と仲良くしていれば、七織だって他に目がいくかも知れない。俺を好きなのは気の迷いだと気づくかも知れない。自分も彼女がほしいって思うかも知れない。
マナミが一緒にいてほしいって言うから――それを言い訳にして、俺は七織から意図的に距離を取った。
あの視線はまだそのままで、罪悪感と、ほんとに最低だと自分でも思うけど――じわりと滲むような喜びが、胸の中にあった。
七織はまだ俺のこと好きなんだな。っていう、仄かな喜び。
それを俺に突きつけたのは、あおいだった。
「圭典ほんとに平気で誘い断るようになったよね」
「何だよ、急に」
あおいは元々俺とはそこまで仲良くない。っていうか、七織がいるから一緒にいる的な態度がありありと分かる。
「随分徹底してるな、と思って」
「…徹底?」
「なに分かんないフリしてんの? 徹底して佐田さんといるじゃん。まるでこっち避けるみたいにさ」
最後の言葉がドスリと胸に刺さった。
あおいには気づかれていた。そりゃそうか。
「避けてはない。けど…七織のためだから」
「『七織のため』、ね。ふぅん」
じとりとした視線が俺を責めているようで、逃れるようにそっと顔を逸らせた。
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