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スウィート•ピーチティー
あっしくんから電話なんて珍しい。
「もしもし、あっしくん?」
『あ、急に電話して悪い。今話してても大丈夫か?』
「うん、平気。どうしたの?」
『実は今日用事があって近くまで来てて、』
「えっ、今こっちにいるの?」
あ、いかん。遮ってしまった。
あっしくんは気を悪くした風はなく、軽く笑う気配がした。
あれ…何か今の、どこかで同じ感じが…。
『そう。あんまり変わってなくて懐かしいな。七緒と遊んだ公園そのまま残ってる』
「今公園? すごい近く」
『あぁ、七織ん家この辺だったっけ? あ。で、もし午後空いてたら、ちょっと会えねぇかな、と思って。話したいことがあるんだけど』
「いいよぉ。って言うか、そんな近くにいるなら今から家来る?」
あっしくんの話したら、母さんたちも会いたいって言ってたしな。
『昼時は悪いだろ。急だし』
「律儀」
『近くにラーメン屋あるじゃん?』
「あぁ! 新しくできたとこ!」
『そこ行くから大丈夫』
「そう? じゃ、後でどんなだったか教えて。美味しかったら今度一緒に行こうよ」
『そうだな』
あっしくんがちょっと笑う。
「あ、話ズレてごめん。どこに行けばいい?」
『幼稚園の頃みたいに公園で待ち合わせするか』
「いいね! じゃあごはん食べたら行くね」
『ありがとう。また後でな』
「うん!」
ところで話って何だろな。
ということに、電話を切ってから気づく俺。でもまぁ、あっしくんだし。悪い話じゃないよね。
公園で待ち合わせって懐かしいな。幼稚園の頃一緒に遊ぶのはいつも公園だったから、母さんや兄ちゃんと一緒にあっしくんのお母さんたちと待ち合わせてよく遊んだっけ。あっしくんの妹ちゃんちっちゃくて可愛かったな。
家に帰ると、俺は一応母さんに午後出かけることを伝えた。
「出かけるのにそのくたびれたTシャツでいいの?」
「くたびれたとか言わないでよ。今この服で買い物してきたんですけど?」
まぁ確かに、ちょっとよれてはいるけど…。あっしくん優しいから、だらしないとか言わない…と思う。それに近所だし。
くらいの軽い気持ちで昼食後に待ち合わせ場所の公園へ向かった俺は、やっぱり着替えてくればよかった…という気持ちに陥った。
「悪いな、急に呼び出して」
「ううん。あの…俺、着替えてきてもいい…?」
「え?」
待ち合わせ場所にいたあっしくんは、当たり前だけど決して部屋着とかではなかったわけで。
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