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第101話

俺のだらしなさがバレる…。 いつもこんなよれたTシャツ着てるわけじゃないからね? 午後いちばんの公園には、誰もいなかった。 俺たちは、大きな木の下にあるベンチに並んで座った。日差しが少しずつ強くなって、揺れる葉っぱが眩しい。 「あっしくん、あのラーメン屋どうだった?」 「チャーシューが厚くて美味かった。麺はちぢれの太麺で、スープは結構あっさり」 「太麺か…太麺とあっさりスープって合うの?」 「あっさりだけど麺とは結構絡んで、俺は好きだな」 「俺太麺あんまり食べたことないかも。やっぱ今度一緒に行こ」 「俺はいいけど」 「?」 『俺は』? と思ってあっしくんを見る。俺だっていいけど? 「七織は、俺の話聞いてからまた考えてもらっても?」 どゆこと? 「1週間色々…考えてたんだけど」 「はい」 「俺、七織のことが好きだ」 「は、……え?」 頷こうとして、脳が言葉の意味を理解した瞬間、俺の時間は止まった。 今なんて? 「急にこんなこと言って悪い。でも多分、七織にはストレートに言わないと伝わらねぇかな、と思って」 「あ、え、その」 「びっくりしたよな」 「えっ、いや、その…はい」 手をわたわたさせてどう見ても挙動不審な俺は、素直に頷いた。だって、あっしくんがモテるの知ってる。なのに…何で、俺? そんな思いが顔に出てたんだろう。あっしくんは俺を見てちょっと笑った。 あ、今の笑い方、何か可愛い…。 「お、俺じゃなくても…って言うか、俺よりもっと…」 もっと、何だろう。 「七織じゃなかったら、俺は好きになってない」 声は穏やかで優しい。けど、強さを感じるそれに、俺は知らず息を止めていた。 そんな風に誰かに言われたこと、ない。 「ってか俺いま遠回しに振られてる?」 「そっ、違っ、そういうことじゃなくてね!?」 俺があっしくんを振るなんてそんな。 慌てて首と手を振ると、あっしくんはまた小さく笑った。 「そういうことじゃ、ないんだけど…。俺、その…あっしくんに好きになってもらえるような、そんなじゃ、ないし…」 喋りながら、俺の視線はどんどん下へ。 「俺に好きになってもらえるような、ってのがどんなかは分かんねぇけど。俺は七織が好きだ」 「…っ、なん、で?」 そんなふうに、何できっぱり言い切れるのか分からなくて、俺はあっしくんを見た。 だって俺は、ずっと一緒にいた相手にも好きになってはもらえなかったから。

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