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第104話

俺が圭典のことを好きだったから、色々考えてくれたんだよね。きっと。 「急に呼び出したのに来てくれてありがとな。とりあえず、また明日」 「うん」 「七織が変にぎこちなくても俺は気にしないようにするから」 「ぅ…是非にそうして」 絶対意識して変になる自信がある。ってか自信しかない。 そうしてあっしくんと別れた俺は、自宅ではなくあおの家に直行した。 「あ、あ、」 「何。カオナシの真似?」 「違う! あ、あっしくんに、好きって言われた…」 「やるじゃん、幡中」 あおは楽しそうにそう言うと、ポテチを口に運んだ。 「それで、七織は何て応えたの?」 「俺、は…俺でいいの?ってなっちゃって…」 「七織でいいんじゃなくて、七織がいいんでしょ」 「だって俺…」 「圭典のことは抜きにして考えなよ?」 あおに言われて口を噤む。圭典に振られたから、って言うところだった。 「七織の魅力って圭典だけが決めることじゃないからね。っていうかあいつのことは考えなくていい」 忌々しげにポテチを噛み砕いたあおが俺を見た。 「七織は幡中のことどう思ってんの?」 「どう…。えっと、優しい、し…見た目だけじゃなくカッコいいから、憧れ…も、ある」 「ふ〜ん。懐広いしね、カッコいいよね」 「うん…」 なぜか不意にあっしくんの腹筋の固さを思い出してしまって、いたたまれなくなる俺。や、でもあの体つきはカッコいい。 「ま、決めるのは七織だけど俺はいいと思うよ、幡中。七織のこと絶対大事にしてくれそうだもん」 大事にしたい。って、言われた。大事にしてきたかった、とも。 それを思い出して、胸がぎゅっとなった。間違いなく、あの時俺は、嬉しかった。自分が大事なものになった感じがしたのも、初めてだったから。 「佐川にも聞いてみたら? 七織が知らなかった頃のこととか、教えてくれるよ、きっと」 「うん…」 俺の知らない時間は、長い。小学校から中学まで、9年間。 スマホに手を伸ばすと、俺は由音に電話をかけることにした。あおにスピーカーにせよと言われたので仰せの通りに。 『はいは〜い、どうしたの〜?』 聞こえた由音の明るい声に、そっと息をつく。 「あの、急に電話してごめん。ちょっと、聞きたいこと…相談、があって」 『人選俺で大丈夫? あっくんのがよくない?』 「その…あっしくんのことなので…ご本人には…」 『なるほどね!』 続けて由音から出た言葉に、俺は危うくむせそうになった。 『告白された?』 「っ!」 「お、さすが把握してんね〜」 『あ、日高くんだ〜。やほ〜』

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