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第105話
やり取り軽いな。
「由音も、知ってた、んだよね…?」
『あっくんが七織のこと好きなの? うん、知ってたよ。ま、親友の立場として言わせてもらえればね、ちょっと厳しいけど優しいし、人の気持ち察してくれるいいやつだよ、あっくんは。って、七織も知ってるか』
「俺は…幼稚園の頃のあっしくんしか知らないから…。けど、ちっちゃい頃から優しかったな。ケンカした記憶ないもん」
『あっくんと七織ってそもそもケンカするイメージないけどな』
「お互いがお互いのやりたいこと半分ずつして遊んでそうだもんね」
『あ、分かる』
それどんなイメージ。
『七織は何に悩んでんの?』
「俺…は、自信がなくて…。あっしくんの隣にいるの、俺でいいのかなって気持ちが強くて…」
『う〜ん…本人がいいって言ってるのに?』
「あおと同じこと言う…」
言い方はちょっと違うけど、結局言ってることは二人とも同じことだよね…?
『や、だってさー、あっくんは七織が好きなんだよ。それは事実じゃん。本人がそう言ってるんだから。そこに第三者の意見は要らなくてさ、七織だってあっくんの気持ちだけ信じればいいんだよ。そうでしょ?』
「そ…」
『あっくんがモテるのは今は関係ないっていうかさ、考えなくていいと思うよ』
「俺もそう思う。佐川が正しい」
『恐縮です』
とは言え、と由音は続けた。
『七織は気にしちゃいそうではあるよね。そういう時はね、本人ととことん話した方がいいよ。俺も日高くんも、あっくんじゃないからね。七織が欲しい答えはあっくんしか持ってないんだよ』
俺が、欲しい答え。
『それにさ、あっくんから七織に好きって言ったんだから大丈夫だよ。あっくんは、七織の気持ちに向き合うことから逃げたりしないよ』
「っ」
『ごめんね、変なこと言って。でも、前と違うことは分かってほしくて』
「…ううん。ありがとう」
そうだね。圭典に逃げてずるいって言っておいて、今度は俺が及び腰になってるなんて、カッコ悪い。圭典とあっしくんは違う。ぐちゃぐちゃ理由をつけてたっていいことないって分かったはずじゃん、俺。
「ちゃんと素直に受け取りたい。ただ俺が臆病なだけ。1つ乗り越えたはずなのに、ダメだね」
『って七織が言ってるよ、あっくん』
「ねぇえ!! ご本人いるなら言ってよぉお!!」
ひどい!!
隣でゲラゲラ笑い出したあおもひどい!!
俺真剣に相談してたのに!
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