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第106話
「俺っ、今すごい真剣に…!」
『本当にごめんなさい。でも、あっくんといる時に電話かけてくるから』
「俺が悪いの!?」
『よりと一緒にいること黙ってた俺が悪い。ごめんな、七織』
「いや…いいですけど…」
そもそも俺があっしくんのことで相談したいって始めに言えば良かっ…いや、違うよね? 言ったよね?
俺悪くなくない?
『今日すげぇ混乱させてるから、七織は色々考えて分かんなくなるだろうだろうな、とは思ってた』
「想定の範囲内だって、七織」
『ってか、引っかかってることあるならちゃんと話した方がいいよ』
「そうだよ、ひとりでごちゃごちゃ考えてもいいことないよ。特に七織は」
あおと由音がタッグ組みやがった…。
でもまぁ、ふたりの言うことは正しい。
「引っかかっては、ないけど…。俺、恋愛の成功体験がないから、どうしたらいいのか分からないんだと思う。『嬉しい』だけで突き進んで行っていいのか、分かんないんだ」
『確認なんだけど、七織は嬉しかったんだ? あっくんに好きって言われて』
「あっしくんに言われて嬉しくない人っているの…?」
『これはすごい殺し文句だね、あっくん』
『そうだな』
あおもウンウンって頷いてるけど、何?
「大体、興味ないやつに好きって言われたって嬉しくも何ともないよ」
「俺はその経験すらないので…」
「『嬉しい』だけで突き進めるならそれでいいんじゃない? 突き進んでみなよ。幡中ならしっかり受け止めてくれるよ」
『俺もそう思う〜』
「そこは俺だって心配してないけど」
『七織って今の無意識で言ってる?』
「? 何が?」
『あーうん、いいや。分かった』
由音は何が分かったの?
「七織はもう幡中のこと信頼してるじゃん。それを自覚してるかどうかはともかくとしてさ。あとはもう、ほんとに七織自身の問題だよ」
『“一歩踏み出す勇気”的なやつだね』
勇気、かぁ…。
「…失敗を糧にして行きたいとは、思ってます」
「何で敬語?」
「ぐちゃぐちゃ考えて動けなかったから、それはもうやめたくて。ほんとは何も考えないで突き進んで行けたら楽なんだろうけど…――ううん、こんなこと考えてる時点で、予防線張ってるのは分かってるんだ」
『分かってて変わろうとしてくれてんなら、俺はそれだけで嬉しいけどな』
「…っ」
あっしくんは優しい。
「ありがとう。でも、甘えてるだけじゃ、ずっとこのままだと思うから」
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