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第107話

優しくされてたら楽だけど、ただ甘えていたいんじゃない。 「…変わりたい、から、自分が頑張りたい」 『分かった』 穏やかだけど力強く返してくれたあっしくんに、ホッとする。これも甘えてはいるんだけど。 「自信つけるのって楽じゃないと思うんだけどさ…。俺でいいの?って思うのやめたい」 「幡中にも失礼だしね」 それには『はい』としか言えないな…。 『あっくんが好きって言ってくれる自分最高!って思えばいいんじゃない?』 「それが出来てたら俺は悩んでないだろうなぁ…」 「でも七織さっき、幡中のことカッコいいし憧れてるって言ってたじゃん」 「本人聞いてるのにバラすのやめて!」 恥ずかしいじゃん! 俺が!! 「憧れの人が自分のこと好きって言ってんの、最強じゃない?」 「…………」 そう、だな…? いや、そうなんだけど…。それはそうなんだけど。 「幡中に今の七織見せてあげられなくて残念。すんごいじわじわ赤くなってる」 「いっ、言わなくていい!」 顔が熱い。心臓がすごい力強く動いてるのが分かる。 何だ、俺もう最強だったんじゃん。って、一瞬でも思ってしまった。憧れてる人が俺のこと好きなんだ…って、ストンと胸に落ちたらもう、さっきまでのぐちゃぐちゃ考えてた自分がちっぽけに思えてしまった。 俺ってこんなに単純だったんだ。 好きって言ってもらうのって、こんなにすごいことだったんだ。 『俺も七織に今のあっくん見せてあげられなくて残念。つられて照れてる』 『よりも余計なこと言わなくていい』 「…あっしくんの照れてるところは見たいなぁ」 『写真送る!』 『やめろ』 照れ顔結構可愛いんだよな。自分より背の高いイケメンに『可愛い』は失礼かも知れないんだけど。 「ま、そういうわけだからさ、既に最強なのにグダグダ考えるの無駄だよ。そんなことに時間割くより相手への理解深めてく方が建設的だと俺は思うね」 『日高くんカッコ良〜』 「知ってるー」 あはは、とあおと由音の明るい笑い声が重なる。 …あおのマインドは見習いたいかも。 『確かに知らないことの方が多いよな。今の七織のこと、教えてほしい』 「うん。俺も知りたい」 って言うかさ。 「そもそもそれ聞きたくて由音に電話したんだよね。でも、あっしくんのことはあっしくんから聞きたい。だけど今日はもうキャパオーバーなので明日がいいです」 「最後が本音じゃん」 ちょっと色々信じられないような出来事だったから、落ち着いて反芻させてください。

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